厚生労働省も「すばらしい取り組み」

橋本 2010年10月にスタートすることにしていましたが、6月、7月の時点ではずっと悩んでいました。

―どこが心配でした。

橋本 例えば、製薬業界の監督官庁である厚生労働省がどう言ってくるかと。そこで、保険局、医政局、医薬食品局の局長さんに会いに行きました。お会いする前は心配していたのですが、状況を説明したら皆さん、「すばらしい取り組みですね」というんです。ある局長さんからは、「行政への要望は洪水のように来ますが、自分から実践するから見ていて下さいという話は滅多に来ません。実現すれば患者さんが喜ばれるでしょうね」といわれました。製薬会社のバックアップも特段の問題ないということでした。こうなったら、もうやるしかないと思いました。

年間所得の上限設定など 試行錯誤も

―実際の医療費助成はどのような仕組みで行っているのですか。

橋本 現在は第3期助成の希望者を募集しています(締切2012年3月)。患者さんからの申請を受けて、それを諮問委員の先生方を交えて書類審査し、助成(月額20,000円)の対象を決めています(図)。諮問委員には、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科学の黒川峰夫先生、東京都立荏原病院内科の秋山秀樹先生の医療の専門家に加え、早稲田大学法学学術院教授で社会保障法が専門の菊池馨実先生、国立保健医療科学院研究情報支援研究センター上席主任研究官で医療経済が専門の福田敬先生、さらに今度新しく助成対象になった消化管間質腫瘍(GIST)に詳しい大阪警察病院外科の西田俊朗先生に加わっていただいています。

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―第1期(募集期間:2010年10月〜2011年3月)の助成条件は、世帯の年間所得合計が132万円未満でしたが、第2期(募集期間:2011年4月〜9月)は168万円以内となりました。また一定の年収条件で「高校生の子どもがいる家庭」も対象になるということですね。

橋本 助成条件金額の設定にはいつも本当に悩みます。第1期の132万円という上限は、高額療養費の25%に当たるという考えから設定しました。でも条件が厳しくて問い合わせの時点で、除外せざるを得ない患者さんがいました。問い合わせの電話で患者さんから「こんな金額で生活しているような人がいると思いますか」と怒られたこともありました。

―132万円の年間所得で暮らしている人なんかいないというわけですね。

橋本 でも、実際はいるんですよ。地方に住んでいて、家と菜園を持っていて、仕事があって収入があって、税金も払って、それなりに社会貢献もしているという方々がいます。収入は少ないけれども出費も少ないので、不自由な思いをすることなく暮らしている。そんな人がある日、突然CMLを発症する。病院に行ったら、医師から「いまは良い薬があるからよかったですね」といわれるんだけれども、金額を聞いて途方に暮れてしまう―。そんな方々が実際にいるんです。
 でも所得制限の上限が厳し過ぎたと反省して、第2期に所得上限を168万円以内に引き上げました。