わが国ではEGFR変異率が高いため多くの病院、研究所ではEGFR変異陽性例のみを対象としてprospective 第2相試験が数多く行われた。少なくとも7グループの研究報告が存在する。東北大学(Inoue A)、埼玉医大(Sutani A)、北海道肺がん研究グループ(Asahina M)、愛知がんセンター(Yoshida K)、群馬大学(Sunega N)、産業医大(Sugio K)、WJTOG(Tamura K)からの報告はJ.Clin Oncol, Br J Cancer, Lung Cancer, J. Thoracic Oncolなどに2005〜2008年の間に報告されている。各々は20〜30例程度の小規模な研究であったが、どの研究結果にも矛盾はなかった。これらの統合解析が行われS. Morita 博士がClin. Cancer Res.に2009年に発表した。この研究はI-CAMP(IRESSA Combined Analysis of Mutation Positives)と呼ばれている。合計148例のEGFR変異を持つNSCLCの奏効率は76.4%、PFSは9.7カ月、全生存期間(OS)は24.3カ月であった。この結果はretrospective解析の結果とほぼ同等であった。EGFR変異を持つ患者の特徴は腺がん(143/148)、女性(102/148)、非喫煙者(105/148)であった。エクソン19の欠失、エクソン21の点突然変異を持つ患者のPFS,OSに差を認めなかった。また“イレッサ”と殺細胞性抗悪性腫瘍薬の投与順序は治療効果(OS)に影響を及ぼさなかった(図4、図5)。

 これらの成績は2004年春にT. Lynch博士と J. Paez博士の発見を臨床的に裏付ける結果であった。日本の研究は第2相試験に伴うバイオマーカーの研究であったが、欧米の第3相比較試験の付随試験と比べ、遥かに信頼性が高いという実感は日本の全ての研究者に共通するものであった。

様々なEGFR変異検出法と結果の多様性
 バイオマーカーには定性的バイオマーカーと定量的バイオマーカーが存在する(表3)。定性的バイオマーカーには遺伝子変異やSNP解析で結果は、プラスかマイナスで判定され、誰にも分かりやすく再現性が高いと思われる。一方、定量的バイオマーカーは免疫組織学的染色やm-RNA、たんぱく質の発現などである。一定の基準を設け、それ以上は陽性、それ以下は陰性と判定される。即ち研究毎に判定基準が異なる可能性があり再現性が疑問視される。