栄養状態の悪化と慢性的な炎症反応の双方が、がんの病勢進行に関与していることが明らかにされつつあり、双方を改善するEPA含有食品が考案されている。5月にはがん免疫栄養療法研究会(代表世話人:名古屋市立大学大学院医学系研究科消化器外科教授・竹山廣光氏)が発足、EPA含有食品(プロシュア)の使用経験を報告するための第一回症例検討会が2011年7月16日に名古屋で開催された。より高度なレベルのエビデンスを得るための前向き臨床試験の必要性も指摘された。


Part 1
基調講演:今日から始めるがん免疫栄養療法のすすめ

写真1 基調講演の座長を務めた長島中央病院名誉院長の入山桂二氏

 症例検討に先立ち、伊賀市立上野総合市民病院院長の三木誓雄氏(前三重大学大学院准教授)によるがん悪液質の病態、評価手法、がん治療を施行する上での免疫栄養療法の有効性についての基調講演が行われた。

栄養障害に順応できない病態
 がん悪液質は飢餓と並び致命的な栄養障害状態であるが、蓄積脂肪の分解や基礎代謝の抑制といった順応機構が破綻している点で大きく異なるという。外部からの栄養補給が低下した状態で代謝は亢進、一方で異化作用も高じるため、自身の体を使い生命を維持する状況となる。

 がん悪液質に対し、1950年代以降、1日3,000kcalを2〜7週間にわたり摂取させる強制的栄養療法に関する検討が多数実施されたが、栄養状態の改善をみたものは1/3に過ぎなかった。原因は、担がん状態における全身性炎症とこれを背景とした代謝亢進にあり、投与された栄養が十分に活用されないことによると考えられる。

写真2 基調講演を行った伊賀市立上野総合市民病院院長の三木誓雄氏

Glasgow Prognostic Scoreとは
 TanとFeason(文献1)は、進行性胃がん患者を対象とした検討により10%の体重減少、C反応性たんぱく質(CRP)が1.0mg/dL超え、経口摂取カロリー1,500kcal/日未満を全て満たした状態をがん悪液質、いずれかに該当すればその準備状態としている。他方、McMillan(文献2)はCRPとアルブミン(Alb)による炎症をベースとした栄養状態の指標“Glasgow Prognostic Score(GPS)”を提唱し、そのスコアはがんの病期とは独立した予後因子であることを示した。

GPSを用いた栄養障害評価の実際
 三木氏は、英国Glasgow大学栄養学教授のDonald. C. McMillan氏の依頼を受け、日本人の大腸がん患者300例を対象としたGPSのバリデーションを実施した。その結果、測定キットの違いと皮下脂肪量の差から、日本人に適用する場合はCRPのcutoff値を1.0から0.5mg/dLにmodifyした方が、精度が向上することが判明した。

 cut-off値をCRPが0.5mg/dL、Albは3.5g/dLとして患者を4群に分類した検討が行われた(図1)。栄養状態についてはCRP上昇/Alb低下というがん悪液質の状態にあるD群において術前の体重減少が顕著で、骨格筋たんぱく質量の指標であるcreatinine height indexはD群およびCRP上昇/Alb正常のC群で低下していた。

 このC群の状況は、体重減少は僅かという時点から既に骨格筋たんぱく質の崩壊が始まっていることを示唆している。長期予後については、健常人同様と考えてよいA群とCRP正常/Alb低下のB群に差はなく、CRPが上昇を示すC、D群で不良であった。Stage IVの患者のみ抽出した解析では、生存曲線がA、B群とC、D群とに明確に分離し(図2)、平均生存期間は前者の30カ月に対し後者は10カ月であった。この結果について三木氏は、全身状態不良により集学的治療の積極的な施行が困難であったことを示唆しているとした。