(株)洛北義肢・製造部(靴)の濱口洋光氏。

 洛北義肢の濱口氏は月1回、院内で開催される院内の糖尿病カンファレンスにも出席する足底装具の専門家だ。手足症候群に合う靴や中敷きの作成にあたって「足底全体に圧力がかかるように“トータルコンタクト”を目指している。足型の採型は立位で行い、微調整はCAD/CAMシステムで行っている。中敷きならば1週間、靴まで作る場合は1カ月ほどかかる」と説明する。

 細かなポイントには試行錯誤が必要だ。手足症候群の治療や悪化防止策として厚生労働省の『重篤副作用疾患別対応マニュアル』の解説には「安静や、柔らかい材質の足に合った靴」と記載されているだけで、具体的には説明されていない。加工法や素材の選択には独自に工夫を続ける必要があったという。

がん患者の日常生活をサポート
 現在までに靴や中敷きを処方された手足症候群のがん患者は8例。カペシタビンとタキソールを使っていた患者が1例ずつで、6例はソラフェニブを使用していた患者だ。治験中は脱落が相次いだが、靴を処方するようになってから脱落するHCC患者は激減した。

 ある40歳代の男性HCC患者は多発性骨転移や多発性肺転移を来していた。手足症候群が重症化したことから中敷きを作成した。ソラフェニブによる治療を1年半ほど続けることができ、骨転移病変が消失、肺病変も転移巣1つとなったことから摘出手術を受け、現在、腫瘍のない状態で生存している。

 また、カペシタビンによる治療を受けていた転移性乳がんの女性患者も、処方された中敷きを使いながら通院を続けている。この患者は「ただ延命されるのではなく日常生活を続けていきたい」と担当看護師に語っている。

 松村氏は「外来で化学療法を行う機会が増えている。以前のように生活のすべてをがん治療に注ぐという方針ではなく、患者のQOLを重視し、仕事をこなし日常生活を送りながら抗がん剤治療を継続することが可能になってきたと指摘する。

求められる皮膚科医の有効活用
 皮膚に有害事象を発症することが多い分子標的治療薬の登場以降、皮膚有害事象に対する支持療法の質を上げることは皮膚科医にこそ可能であり、皮膚科医は皮膚の悪性腫瘍に限らず、がん全般の医療にかかわりを持つべき。同時に皮膚科以外の医師も積極的に皮膚科医に相談するようになってほしい」と語る。

 京大病院のように積極的に靴まで処方するためには、濱口氏のような熱心な靴のスペシャリストとの連携が欠かせない。がん化学療法の副作用対策でここまで対応するのはまだまれな例かもしれない。しかし、糖尿病潰瘍では靴の作成が日常化しており、身近な専門家に相談することも無駄ではないかもしれない。松村氏は「がん化学療法にかかわる副作用対策はチーム医療を実践するよい機会と捉えるべき」と語っている。