一部の分子標的治療薬では皮膚障害である手足症候群が発生し、重症化すると休薬や減量を余儀なくされている。京都大学医学部附属病院の皮膚科医らが手足症候群に悩むがん患者らに靴や靴の中敷きを処方して成果を挙げている。同病院では、靴を処方するようになってから治療を中断するケースが少なくなったという。


 毎週水曜日の午前中、京都大学医学部附属病院はフットケア外来を行っている。患者の多くは糖尿病による足潰瘍を罹患しており、フットケアの一環として靴の作成にも応じているのだ。しかし、最近になってそのような患者の中にがん患者が加わるようになってきた。

 がん患者の多くは、分子標的治療薬のソラフェニブによる治療を受けている肝細胞がん(HCC)の患者たちで、いずれもソラフェニブの副作用である手足症候群(hand-foot syndrome; HFS)に悩んでいる人々だ。フットケア外来に常駐している義肢装身具メーカー(株)洛北義肢の社員、濱口洋光氏はそうした患者一人ひとりの足型を取り、自社工場に持ち帰り、それぞれの足に合った靴や靴の中敷きを作成している(写真1)。

 従来、糖尿病による足病変対策手段であった靴や靴の中敷きを、がん患者にも処方するようになったのはここ3年ほど。がん化学療に分子標的治療薬の使用が増大するとともに、靴や中敷きのオーダーメードによるフットケアを必要とする患者が出てきたのだという。

がん化学療法の継続を妨げる手足症候群
 手足症候群は、抗がん剤投与開始2〜4週間後に手掌や足底に発症し、水疱やびらん、亀裂を生じることがある皮膚疾患。足底部で重症化すると歩くこともままならなくなり、患者のQOLを著しく損なう(表)。

 同病院准教授の松村由美氏(皮膚科医、医療安全管理室長)によると、「手足症候群は以前から高用量のシタラビンやメトトレキサート投与の2〜3週間後に出現することが知られていたが、症状は一過性で自然に軽快するため大きな問題になることがなかった。しかし、分子標的治療薬の登場とともに患者が急増してきた。症状が発症する代表的な抗がん剤はカペシタビン、スニチニブ、そしてソラフェニブなどが知られている」という。

京都大学医学部附属病院准教授で医療安全管理室長の松村由美氏。

 HCCや腎細胞がんの治療薬であるソラフェニブでは5〜6割の患者で手足症候群が出現し、それが治療中止の理由の1つになっている。ソラフェニブを販売するバイエル薬品がまとめた特定使用成績調査(2010/9/13)によると、服用開始76%が服用中止となり、そのうち39%が有害事象によるもの。有害事象の最も頻度が高かったのが手足症候群だった。

 京大病院がソラフェニブの国内治験に参加した際には、手足症候群で治療を中止する患者が出た。実薬群で手足症候群が頻発するために、医師にも患者自身にも実薬群に入ったことが察知できてしまうほどだったという。症状が現れる場合は服薬開始後2〜3週間のうちに起こることが多く、治療を開始して早期に脱落してしまうことになる。松村氏は「ソラフェニブはHCCに対する治療効果の高い薬剤であり、そのためには治療を継続することが必要。HFSで脱落する患者が多くなれば、薬の評価に大きな影響を及ぼしかねない」と指摘する。