今年の膵臓がんの化学療法のトピックスといえるGEST試験では、GEM対TS-1対GSの3アーム比較が進行膵臓がんを対象に実施されたが、生存期間を評価項目とした場合、どのアームも同じという結果が出ていた。しかし、腫瘍縮小効果の有無には差があるのではないかというのが吉富氏らの見解だ。

 「これまでも、無理をすれば手術ができるという症例はあった。しかし、手術を優先しても予後が改善しないケースが多く、手術を断念していた。GS療法では腫瘍マーカーの値が半数以下になるなどの症例も見られる。腫瘍のサイズだけではなく勢いを落として、術後の予後を改善することもできるのではないか」と語る。

患者の選択が決定的に重要
 大腸がんで広く提唱されているconversionの可能性を膵臓がんに拡大することには慎重論も聞かれる。ある膵臓がん専門の外科医は、「大腸がんに比べ膵臓がんの患者は高齢者が多く、全身状態が悪い患者も多い」と指摘する。そもそも膵臓がんの手術はほかの臓器がんに比べ難しい手術でもある。膵頭十二指腸切除の死亡率は1〜2%で、ほかの手術に比べ高い。

 吉富氏はそうした事情を認めたうえで、膵臓がんのconversionの成否を決める鍵は患者選択にあると指摘する。「現実問題として80歳を超える患者に行うことは困難であると思うが、膵臓がんの患者でも比較的全身状態が良好で元気な患者もいる。膵臓がんだから不可能とは判断すべきではない」。また患者選択にあたって化学療法(今回はGS療法)への反応性も大きな意味を持つという。「GS療法が奏効する患者は長期生存の可能性がある。逆にGS3クール施行後に病勢進行(PD)となった患者もいて、こういう患者に手術をすべきかどうかは現在のところ判断できない」とも語る。

 千葉大学グループは、県内を中心とした医療機関の協力を得て、第2相試験を計画している。評価項目は血管浸潤を伴う局所進行膵臓がんに対する術前GS療法を行っての外科切除率、生存期間に対する有効性、安全性に対する検討としており、45例を目標に、登録と観察期間で5年をめどに結果を出す予定だという。