大腸がんなどで提唱されているconversionの考えを難治がんの代表である膵臓がんで検証する動きが出てきた。第42回日本膵臓学会大会で千葉大学のグループが、ゲムシタビンとTS-1との併用(GS療法)により膵臓がんをdown stageさせ、外科切除適応拡大の可能性を報告している。


千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学の吉富秀幸氏。

 膵臓がんは予後の悪いがんの筆頭だ。治癒を期待できる唯一の治療法は外科切除だが、早期発見が難しく、発見時に転移や浸潤を起こしていて、手術不能というケースが多い。実際、発見されても切除できるのは30〜40%といわれている。そこで、膵臓がんの治療成績を改善するためには、切除可能な段階で早期に発見する仕組みが重要になる。

 進行、転移して手術が困難な場合でも、化学療法などを組み合わせて手術不能な状態を手術可能な状態に戻す方法はconversionと呼ばれ、大腸がんで提唱されている。千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学教授の宮崎勝氏と吉富秀幸氏らは、ゲムシタビン(GEM)とTS-1を併用した新規レジメンであるGS療法に反応して腫瘍縮小が起こる患者がいることに注目し、膵臓がん治療におけるconversionの可能性を追求している。

5例によるレトロスペクティブな検討
 第42回日本膵臓学会大会で千葉大学グループが報告したところによると、検討したのは初診時切除困難と判断された5例(膵頭部がん4例、膵体尾部がん1例)。切除不能と判断した根拠(切除不能因子)は、肝臓への遠隔転移(1例)、広範囲上腸間膜静脈浸潤(1例)、主要動脈浸潤(3例)。これら5例にTS-1 60mg/m2 day1-14、GEM1g/m2 day8、15の1コース21日間を2〜36コース(中央値4コース)を行った。

 この術前化学療法の結果は、完全奏効(CR)が1例、部分奏効(PR)が3例、不変(SD)が1例。CRの症例は肝臓に転移していたケースで、GS療法を継続したが、原発巣に再燃を認め、切除を施行した。手術は4例が膵頭十二指腸切除術+門脈合併切除、1例が膵体尾部切除+腹腔動脈幹合併切除だった。術後にはGEMによる術後補助化学療法を施行した。

 1例は術後8カ月、治療開始より18カ月で死亡、別の1例は膵臓がん以外の疾患で死亡した。残りの3例は、術後8、14、56カ月、それぞれ治療開始から11カ月、17カ月、92カ月を経過して生存中だという。この治療開始後92カ月という長期生存症例は肝臓に転移していた症例だという。

がんの勢いを落として境界症例を手術する
 膵臓がんでもconversionの可能性を検討するという動きが出てきた背景には、GS療法という腫瘍縮小が期待できるレジメンの登場が大きな意味を持つと吉富氏は説明する。「これまでGEMを単独で使用しても腫瘍が縮小する症例を膵臓がんではあまり経験することがなかった。GS療法を行うようになって初めて経験したことから、down stageが可能ではないかと考えた」と語る。