胃がんでは医師主導治験
 胃がんについては、国内の医師主導治験で有効性を検証することも計画されている。ここでもし有望な結果が出れば、製薬会社に開発が引き継がれる。医師主導治験といえば、今までは既に承認された薬剤の適応拡大に限って実施されるのが普通であり、TAS-102の胃がんに対する試験が実現すると、初めての“未承認薬医師主導治験”となる。

 今後は国内の限られた医療機関で数多くの第1相試験が実施され、有望な結果が出れば、第2相へ、さらにはがん種によってはグローバル第3相へと世界を舞台に評価されるというシステムの確立を大津氏は目指している。そのために国立がん研究センターを中心にした“Phase1センター”なども構想され、今年度から年間5億円で5年間の国家予算措置が講じられることになった(別掲記事参照)。そうした完成されたシステムから見ると、TAS-102は例外的な存在といえる。しかし、化合物自身が望むか望まぬかに関わらず、日本の新薬開発の将来を占う試金石となることを運命づけられたことは間違いないようだ。

国立がん研究センターがPhase 1センターを創設
 ドラッグラグの主犯は第1相試験の遅れ―。
 新薬の導入が海外に比べ遅くなる原因は、日本よりも海外での臨床試験が優先されることにある。そこで国立がん研究センターでは、全世界で初めてヒトに新規抗がん剤を投与する試験“First in human試験”を含む第1相試験を実施するための組織、「国立がん研究センターPhase1センター」を創設した。Phase1センター長には大津敦氏が、副センター長には中央病院副院長の藤原康弘氏が就任した。
 これは厚生労働省の早期・探索的臨床試験拠点整備事業の一環。基礎研究の成果である薬物・機器を世界に先駆けてヒトに初めて投与・使用する臨床試験の実施体制を整備するために国内5機関を選定、がん分野では国立がん研究センターが唯一選定された。1施設あたりの補助金額は、整備事業(First in human体制整備)として年間5億円、研究事業(医師主導治験の実施)として年間1億円をそれぞれ5年にわたって受け取る。
 創設されたPhase1センターではFirst in humanの医師主導治験・企業治験、First in human終了後未承認薬での医師主導治験、付随するトランスレーショナルリサーチを推進することにしており、近く必要な専門スタッフを雇用する。既に以下の5つの研究事業を推進することを決めている。(1)抗がん剤内包ミセル製剤、(2)未承認薬TAS-102、(3)RPN2核酸製剤、(4)経口VEGF阻害剤、(5)未承認薬Olaparib(PARP阻害剤)。そのほか、がんワクチン、マルチキナーゼ阻害薬、PIM2キナーゼ阻害剤などのFirst in human試験を検討している。