(4)外科治療の適応
 手術適応の判断に際しては、四肢長管骨では骨折とそのリスクが、また脊椎では脊髄麻痺とそのリスクが適応と考えられる3)4)5)6)。それ以外は基本的には保存療法をまず優先することが可能である。しかし単発転移でかつ長期生存の可能性が期待しうる場合は保存療法のみならず積極的な外科的治療も考慮すべきといえる3)

(5)四肢骨転移に対する外科治療
 保存療法、特に放射線が有効か効果の期待できるがんではmarginal margin以上のwide resectionと術前または術後放射線療法の併用で局所コントロール可能である。一方保存療法が無効または期待しがたいがんでは、wide margin 以上のwide resectionが必要である。しかし一部marginal marginとなっても放射線併用により大部分局所コントロール可能といえる。再建には人工関節や髄内釘セメントなど強固で即効性の固定材料を用い術後早期に支持性を確保し、早期リハビリ開始により速やかにADLを回復することが重要である。

 四肢骨転移に対する外科治療の術式は広範切除+prosthesis置換が最も確実であるが状況により掻爬+セメント(cementing)+内固定、広範切除+内固定+金属メッシュ、セメント補強なども適応される。wide margin 以上の手術であれば局所コントロールされmarginal marginとなった例も放射線を併用することで大部分が局所コントロールされる。

(6)骨盤骨転移に対する外科治療
 骨盤例ではその解剖学的特徴から放射線を併用した縮小手術が必要となる場合が多い。また出血対策が重要であり術前塞栓療法も積極的に行う。

(7)脊椎骨転移に対する外科治療
 脊椎転移に対する手術適応や術式選択はその解剖学的特殊性から諸家により様々の見解がある5)6)7)。従来、局所根治性を獲得するのは困難であるため、手術の目的は麻痺の改善や支持性確保と考えられている。また放射線感受性の高いがんによる麻痺や緩徐な麻痺は放射線治療で改善が期待できるため手術適応は圧迫骨折による骨性圧迫や放射線感受性の低い腫瘍の急性麻痺に限定されることが多い。単発転移で他臓器転移がなく長期生存可能な場合、原発性悪性骨腫瘍に準じ脊椎全切除など局所根治性の獲得を目指した手術の報告も見られる6)。脊椎転移の多くが圧迫骨折のリスクと脊柱不安定性を有しており除圧のみでなく固定術の適応がある。

チーム医療の重要性:Cancer Boardの意義
 種々のバイアスの関与は否定できないが全身状態(PS)、日常生活動作(ADL)の改善は生命予後改善に寄与する可能性が示唆される(図10)。

 原発臓器科を主治医として整形外科や放射線科、緩和科などによるチーム医療を行うことを十分に説明し不安を取り除く。手術を適応する場合は十分かつ慎重な説明を行い、患者の理解と同意(インフォームドコンセント)を得る必要がある。患者のみならず、家族に対しては進行がんであることを前提に起こりうる合併症を十分に説明する必要がある。

 がん骨転移の治療には整形外科を中心に原発臓器科、放射線科、化学療法科、緩和ケア、リハビリなどから構成されるチーム医療が必須である。整形外科医は手術のみならず骨転移による骨折や麻痺などのリスク評価や管理を行う。しかし骨転移は通常多臓器転移を伴うし、基本的に原発臓器に応じた化学療法や薬物療法が主体となる。従って全体を通じての主治医は原発臓器科が担当する必要がある。

 終末期の管理も原則的に原発臓器科の主治医が実施あるいは施設を手配することが骨転移難民化を防ぐうえで重要である。多くが最終的に緩和終末期医療を必要とすることもあり、地域施設との連携を図りいわゆる骨転移患者の難民化を防止することが重要である8)9)。またCancer Boardは集学的チーム治療を実践するうえで有意義なシステムである。

 転移は肺、肝臓などの内臓やリンパ節はもちろんであるが、骨へもかなり高頻度で生じることが分かってきた。原発臓器科で特に手術や化学療法など初回の治療に携わった医師が転移発生後も主治医として経過を把握し、各転移に対する適切な対応を他科との連携で計画することが必要であり基本原則である。

一般整形外科医も治療に参加を
 がん拠点病院のみならず一般病院でも乳がん、前立腺がん、肺がん、胃がんをはじめ多くのがん患者を治療しており、骨転移が発生している。言うまでもなく、がんは転移をきたす疾患であり、転移を防止し治療することが必須課題である。治療が奏効して、患者が延命しているということは、一方で骨転移のリスクが増大しているのだという事実を医師が肝に銘じておく必要がある。

 内臓転移に比べ骨転移は直ちに生命予後を左右しない反面、疼痛やADL障害をきたすため長期にわたって患者や家族を苦しめる結果にもなる。今後はがんを治療している各病院でそれぞれの原発臓器科医師が整形外科医と協力し、骨転移の早期発見と早期治療に努め骨折麻痺を予防する方向に向かう必要がある。がんを治療している一般病院においては、一般整形外科医も骨転移の診断、治療に関する知識を習得し診療に積極的に参加することが必要となろう。

[参考文献]
1)日本整形外科学会、骨軟部腫瘍委員会:全国骨腫瘍患者登録一覧表、国立がんセンター、1998
2)Jun Manabe, Noriyoshi Kawaguchi, Seiichi Matsumoto, Taisuke Tanizawa:Surgical treatment of bone metastasis: indications and outcomes;Int J Clin Oncol(2005)10:103-111
3)眞鍋 淳:癌の骨転移;今日の治療指針vol 51 ,2009(医学書院),811-812
4)眞鍋 淳:骨転移に対する手術療法;別冊医学のあゆみ;乳腺疾患454-457,医歯薬出版, 2004
5)徳橋泰明、松崎浩巳、根本泰寛 ほか:脊椎転移癌に対する術式選択とその治療成績─術前予後判定点数による治療戦略─臨床整形外科38:739-745,2003
6)富田勝郎、川原範夫、村上英樹 ほか:脊椎転移に対する局所根治手術と治療成績;骨関節靱帯17:484-490,2004
7)守田哲郎:脊椎癌転移に対する手術─適応・手術法・成績、骨転移治療ハンドブック第1部 第7章 p81-93 厚生労働省がん研究助成金がんの骨転移に対する予後予測方法の確立と集学的治療法の開発班編集 2004
8)荒木信人:治療方針の立て方:骨転移治療ハンドブック第1部 第3章 p28-38
  厚生労働省がん研究助成金がんの骨転移に対する予後予測方法の確立と集学的治療法の開発班編集 2004
9)内田淳正:骨転移─序文;骨関節靱帯17(4):315,2004