骨転移を早期発見する意義
 従来、骨転移は生命に直結しないことからあまり重視されず発見が遅れることが多かった。そのため疼痛や病的骨折が出現して初めて診断されることが普通であった。しかし、それでは有害事象を未然に防ぐことはできずADL障害とQOL低下をきたし、結果的に生命予後をも損なうことになる。早期治療が重要であることは明らかなのだが、これまでは早期発見されても進行を防ぐことができる有効な全身的治療法が十分ではなかったこともあり、早期発見が熱心に行われているとは言いがたい状況が続いてきた。

 放射線療法は有効な治療だが、ターゲットは限定されるし副作用も考慮すると早期治療には適当ではない。手術も侵襲が大きく早期治療には適しない。一方、近年のビスホスホネート剤の登場と発達は、早期発見の意義を大きく増加させたと思われる。すなわち早期発見によりリスク評価して骨折や麻痺リスクがない場合は、まずビスホスホネート剤で治療し、骨折麻痺リスクが増した場合は放射線治療を行い、さらに切迫してきた場合は予防的手術を考慮するという段階的治療法が可能となってきたのである。

 それによって従来に比べて骨折や麻痺などの有害事象を大きく減少させて、結果的にQOLの維持、ひいては生存期間の延長にもつなげられることが分かってきた。また新たに開発された抗RANKL抗体であるデノスマブにも期待がかかる。最近の分子標的抗腫瘍薬剤の発達も同様な効果をもたらしている。例えばゲフィチニブ(イレッサ)は奏効すると病的骨折が修復されるほどの効果が期待される(図1)。これらの薬剤の効果は早い段階であればある程度、効果的であることは疑いがない。従って早期発見の意義は以前に増して大きくなっている。

骨が転移の全般的な母床となる可能性
 骨転移は単に全身臓器への転移の1パターンであるのみならず、転移の大きな割合を占めていることも分かってきた。乳がん、前立腺がんをはじめとしてほとんどのがんで骨転移が生じる。そもそも骨というのは全身の中の大きな体積を占めている。骨髄はニッチに代表されるように種々のサイトカインに富み、がん細胞の生育に非常に適した環境を提供する。剖検による病理組織学的検討やMRIやPETなどの発達で骨髄転移や骨梁間転移というものの存在が明らかになり、しかもこれらが早い段階で発生している可能性も示唆されている。

 乳がん、前立腺がんのみならず多くのがんにおいても骨髄内に早い時期から転移巣が形成されている可能性が示唆されるようになった。そうなると骨転移は単なる一臓器転移ではなく、他の転移の母床である可能性も浮上してきたのである。転移を制すればがんを制す、という言葉があるが骨転移、骨髄転移は転移の母床である可能性があり骨転移の制御が転移全体の進行の制御につながることも十分考えられるのである。その意味でも我々はもっと骨転移に関心をもつべきであるし基礎的な分野との連携を密にしてtranslationalな研究をさらに進めることが望まれる。

早期発見のポイント
 臨床現場ではまずは有害事象が予防可能な時点での早期発見が不可欠となる。がんと診断された場合は種類に限らず骨転移の有無を一度は検査しておくべきである。骨転移が初発症状の場合や当初原発不明がんの骨転移も少なくない。中高年で持続性、増強傾向の疼痛がある場合は、骨転移も念頭に置く必要がある。まず単純X線所見が診断上重要で、神経痛や放散痛と思われる場合でも疼痛部位のX線を必ず撮影することが重要である。例えば殿部痛や股関節痛の場合に、変形性脊椎症や脊柱管狭窄による神経痛と考えて腰椎のみのX線やMRIを撮影したため骨盤や股関節の転移の発見が遅れる場合があるので注意を要する。

 骨転移は基本的に骨融解と骨形成の混合型であるが、前立腺がんでは骨形成主体、乳がんでは骨形成優位、腎がん、大腸がんでは骨融解主体、肺腺がんでは骨融解優位、胃の低分化型腺がんでは骨形成優位、高分化型腺がんでは骨融解優位などがん種や組織型によって様々である。