近年、骨転移の増加に伴い、がん治療における骨転移対策の重要性が増している。以前は、早期発見しても、対処法が限られており、その意義は軽視されてきた。しかし、破骨細胞の働きを抑えるビスホスホネート剤が登場、早期発見と適切な診断の意義が増している。がん骨転移の診療経験が豊富な眞鍋氏に、一般腫瘍医が知っておくべき、骨転移対策の最新事情を解説してもらった。


 近年がんの治療が進歩し延命が得られるようになった結果、骨転移例の増加が顕著である。そのため整形外科へのコンサルテーションも増加傾向にある。整形外科医は以前に増して、骨転移に対する適切かつ迅速な対応を求められてきている。それと同時にいわゆる“骨転移難民”の発生が大きな問題となってきた。

 骨転移難民の定義は必ずしも明確ではないが、主として骨転移の治療が必要な状況であるが、適切な治療が受けられない患者と解釈できる。それを防ぐルール作りが必要であり、その基本は「原発臓器科が主治医となり、患者のがんの再発転移に関する一貫した治療スケジュールを管理する」ということである。転移は種々の臓器に生じるために各臓器別治療が必要であり、手術適応があれば肺転移手術は呼吸器外科が、骨転移手術は整形外科が担当する。保存療法のうち放射線治療は放射線科が担当するが、抗がん剤やホルモンなどの薬物治療は各原発臓器科が担当する。すなわち骨転移の場合も手術治療は整形外科が担当するが、保存療法は基本的に原発臓器科が一貫して担当することが原則である。

原発不明がんへの対応
 種々の検査にもかかわらず原発不明のままであった場合が問題となる。その場合の主治医は整形外科ではなく原発臓器の可能性が高い消化器内科や呼吸器内科が原発不明がん診療チームを形成して受け持つことが必要である。整形外科が初診医であっても原発探しは基本的に内科が中心になって行う方が効率的である。もし生検が必要な場合は整形外科が関与するが基本的には内科が主役である。また最終的に原発が不明の場合も疼痛緩和以外に可能であれば何らかの化学療法や放射線療法およびビスホスホネート剤による治療を実施することが望ましい。

延命により骨転移患者が増加
 一方でQOL(Quality of Life)確保のために骨転移巣のコントロールが不可欠となってきた。四肢荷重骨においては骨折や骨折リスクの予防と支持性確保が、また脊椎においては脊髄麻痺の予防や治療が重要である。種々の画像診断、血液所見、あるいは必要に応じ生検によりできるだけ早期に効率的に診断し、骨折麻痺リスクを評価して適切な治療を行い骨折や麻痺を予防することが必要である。

 それには整形外科を中心にチーム(Cancer Board)を組織し集学的な診断治療システムを構築することが有用である。しかし手術例を除き整形外科に入院して治療することは整形外科医数や病床数から不可能である。また骨転移例はADL障害をきたして長期入院を余儀なくされることも多い。脊髄麻痺では手術後も麻痺改善が困難な場合が少なくないため手術を躊躇せざるを得なくなる場合が生じやすい。このような状況の打開には、主治医である原発臓器科との密な連携が不可欠であり整形外科の手術後の経過が慢性化する場合は原発臓器科との協力が必要である。

 平成20年度全国骨腫瘍登録1)によると、2006年〜08年の登録数は原発性悪性骨腫瘍(悪性リンパ腫、骨髄腫を含む)が1,403例に対し続発性(転移性)悪性骨腫瘍は2,351例であり骨転移は原発、続発を併せた悪性骨腫瘍中で最多である。乳がん、肺がん、前立腺がんをはじめ多くのがん種にわたっている(表1)。また近年のがんの治療成績向上に伴い生存期間が延長しその結果さらなる増加をもたらしている。森脇による剖検例からも明らかに増加傾向が見られ、その原因はがんの増加、延命に伴うと考えられる(表2)。