改良版も開発したが市販化に壁
 渡部氏が調製したのは「病院薬局製剤5版」に収載されている4種類のMTZ外用製剤のうち、親水軟膏を基剤としたMTZ-親水軟膏とカーボポールを基剤としたMTZ-カーボポールゲル(MTZ-Gel)の2種類。同氏は、院内調製した両剤の安定性ややわらかさ、展延性、製剤からの膜透過性などの物性を独自に評価し、さらに臨床試験を実施し、論文として発表するなど、MTZ外用剤のエビデンスの構築に力を注いできた。また、最近になって保水性や保形性が高く、化粧品や医薬部外品で注目されているセルロース誘導体(サンジェロース、大同化成工業)を基剤とした新規ゲル製剤としてMTZ-サンジェロースゲルも開発した。従来のMTZ-カーボポールゲルは創部と薬剤が付着し、保護ガーゼを患部からはがす際に出血や炎症をもたらすことがあったがMTZ-サンジェロースゲルではこうした不都合を解消した。

 しかし、ただでさえ忙しい病院薬剤師にとって院内製剤の調製は大きな負担となる。渡部氏自らが製薬会社に対してこの製剤の市販化を働きかけたこともあったが、返ってきた答えは「製品化するには、患者数がそれほど多いわけでもなく、MTZも古い薬で予想される薬価も見込まれず、開発することは困難」というものだった。日本病院薬剤師会学術第4小委員会(医療現場に必要な薬剤の市販化に向けた調査・研究 委員会)は渡部氏が提唱するMTZ外用剤を市販化要望最優先製剤に指定し、昨年から市販化を厚生労働省や製薬会社に働きかける活動を開始しているが、まだ手を挙げるメーカーはいないという。

仏皮膚用剤メーカーが名乗り
 しかし最近になって動きが出てきた。

 欧州では、大手化粧品会社L’Orealの関連会社で皮膚用医薬品専門会社であるGalderma社(本社フランス)ががん性悪臭の軽減を適応としたMTZ外用薬(Metrogel)を販売している。同社の日本法人であるガルデルマ(東京都新宿区)がこの程、厚生労働省の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議の検討結果を受けてMTZ外用剤の本邦導入方針を表明したのだ。同社のMTZ外用剤は渡部氏が開発してきたMTZ製剤と製剤基剤は異なるが、同氏は歓迎するという。「まず、がん性悪臭の軽減という適応症が日本で生まれることが重要。そういうカテゴリーが新設されれば、私の開発した製剤の市販化にもつながる」

 まだ市販化を目指した動きは始まったばかりで、実際に市販化されるかは不透明な部分が多い。しかし、患者や家族は苦しみ、医師も看護師も苦慮している。がん性皮膚潰瘍に対する悪臭の軽減ががん支持療法の治療の新しいテーマとして浮上してきたことは確かなようだ。