高額化するがん治療費のため治療継続を断念するがん患者が増えてきた。中でも、服薬すれば生存期間が飛躍的に延びる慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬を服用する患者にとって状況は深刻だ。そこで、血液がん患者支援団体が医療費の一部を助成する基金を創設し、経済的に困窮する患者の医療費サポートに乗り出している。わが国では患者支援団体による医療費支援は初めての試みだ。


「血液情報広場・つばさ」はCMLで長男を亡くした橋本明子氏が立ち上げたNPO法人。電話相談のほか各地で造血器腫瘍の患者や家族を対象にセミナーを開催している

制度の見直しを要望する傍ら、医療費助成の募金活動を開始
 有効性が高い薬剤が多数登場し、生存期間が延びるにつれて、高額な薬剤費負担という問題が無視できないものになっている。1997年より患者や家族からの電話相談を受け付けている血液がん患者支援団体のNPO法人「血液情報広場・つばさ」(http://tsubasa-npo.org/)の理事長の橋本明子氏によると、発足当時から経済的な相談は全相談件数の20%前後を占めていたが、2008年のリーマン・ショック以降、「収入の激減で治療継続が困難になった」という内容の相談が日増しに増えてきた。

 「長期にわたって治療が継続する場合、高額療養費制度の多数該当が適用され、患者が支払う自己負担額は月4万4000円(70歳未満の一般区分所得)になる。しかし、“一般区分層”は広く、月収が20万円程度の家庭にとって4万4000円の支払いであっても、継続することは容易なことではないようだ」と、橋本氏は語る。

 この状況を打開すべく同団体では、血液がんの患者団体3団体とともに「血液がん・高額療養費制度の見直しを提案する連絡会」を結成し、解決策について討議を重ねた。昨年5月には「高額な医療費に関する討論会」を開催し、そこで出された結論をもとに長妻昭厚生労働大臣(当時)に高額療養費の自己負担限度額の見直しを求めた要望書を提出した。同じ頃、全国保険医団体連合会も同様の趣旨の要請書を提出。このような動きを受け、同省保健局保険課は社会保障審議会医療保険部会で高額療養費の見直しの検討を開始した。

 しかし、国の制度の見直しを待っている間にも、患者から「今回処方された薬が終われば、次の処方は受けられそうにない」といった切羽詰まった声が次々に届いた。橋本氏らは国への要望と並行して、経済的に困っている患者に助成するための基金作りのための募金活動に奔走した。その結果、基金立ち上げに必要な2500万円余りを確保できたことから「つばさ支援基金」を昨年10月に創設した。

全国から397件の問い合わせ、周知されていない地域も
 「つばさ支援基金」は、「CMLと診断されて約1年以上の治療を受け、現在も治療が必要な状態の70歳未満の患者で、経済的な事情により治療の継続が困難な人に対して、医療費の一部(月額2万円)を原則翌月中に助成する」という仕組みだ。2009年の世帯所得の合計が132万円未満であることも条件となる。

 昨年10月1日から第1期助成の受け付けを開始。血液内科を設置している約500の医療機関にポスターを配布した。新聞やテレビなどのメディアで紹介されたことから、2月末までに寄せられた問い合わせは397件にのぼった。しかし、支援の対象となる世帯所得の合計を132万円未満に設定していることから条件を満たす患者が意外と少なく、現在までのところ助成にこぎつけた件数は全国で14件に過ぎない。

 第1期助成は2011年3月末で終了するが、同基金では第1期の反響や実績をもとに、助成の対象疾患、金額、条件、期間を見直したうえで4月以降も医療費の助成を継続する。血液がん専門医や経済学者、法学者などで構成される同法人の諮問会議では世帯所得の見直しを行っており、「世帯所得の金額を引き上げることで支援の対象者を広げていくことを決定している。また、対象疾患についても、ゆくゆくは拡大していきたい」と橋本氏は説明する。