生存期間のカプランマイヤー曲線は図3のようになった。死亡例数はアザシチジン群82例、通常治療群113例でハザード比は0.58[0.43〜0.77:95%CI]。生存期間中央値では通常治療群の15.0カ月が24.5カ月に改善、2年生存率は26.2%が50.8%と2倍近くに上昇した。

 この結果を受けて、米国と日本ではすべてのリスクのMDSが適応になった。一方で、欧州ではAZA-001試験の適応となったHighリスク(IPSSのHighリスクとInt-2リスク)に限って適応が認められている。

骨髄移植のチャンスを増やす?
 「輸血への依存が改善してくれれば、患者さんを日常生活に戻してあげることができる」と輸血依存の緩和を期待しているのが、東京都立駒込病院血液内科部長の秋山秀樹氏だ。

 また、通常MDSで唯一治癒が期待できる治療法は造血幹細胞移植(BMT)だが、秋山氏は「アザシチジンの使用によってBMTができるチャンスが拡がることを期待している。MDSは高齢の患者が多くBMTの適応とならない患者が少なくない。しかし、BMTは実施のタイミングが重要であるから、全身状態が改善してBMTができる状況が増えてくれればよい」という。

 リスクで予後が大きく異なるMDSでは、そのリスクに応じた治療目標を念頭に置く必要があるという指摘もある。Highリスクであるならば、生存期間の改善が目標になる。ここは多くの医師の間でも意見は一致している。今後研究が展開しそうなのはInt-2リスクやLowリスク患者に対してだ。秋山氏が期待するように、BMTなどと組み合わせて、治療成績が活発化する可能性が高い。

 既に、昨年の米国血液学会(ASH2010)ではBMTの後治療にアザシチジンを使用して再発率を低下させるかどうかを検討する報告が20本近くに上った。こうした後治療の評価が固まってくれば、BMTの前に使用して全身状態を改善し、BMT実施チャンスを増やす、あるいは当初から予定されていたBMTの成功率を高める試みも活発化しそうだ。

Lowリスクでは免疫抑制剤より先に使うか
 朝長氏は、発売自体がアザシチジンの真の有効性を探る臨床研究の新たなスタートと見ている。「アザシチジンの評価以前に、国内ではMDSを本格的に研究する臨床グループも存在していなかった。白血病の臨床研究を進めてきた日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)が、今後MDSの治療法について本格的な臨床研究を始める。とにかくやらなければならないことが山ほどある」と話す。検討すべき課題というと例えばMDSの第1選択薬を何にするかという問題がそれだ。Highリスクならばアザシチジンが適しているといえるが、Lowリスクではどうか。実はLowリスクMDSではシクロスポリンや抗胸腺細胞グロブリン (ATG)などの免疫抑制剤が使用され成果を上げてきた。「免疫抑制剤より先にアザシチジンを使うべきか、もしくは併用すべきかが問題になる」と同氏は指摘する。

 脱メチル化が薬効の鍵を握っているとしても、その詳細な機構はまだ明らかではない。臨床で使いながら同時に薬効機序の研究を進めていく必要がある。アザシチジンがなぜ有効であるのかを見極めることは、DNAメチル化とMDS発症との関係をさらに詳しく明らかにする作業でもある。どの遺伝子がメチル化されサイレント化されて、それがMDSの発症につながっているのかが全くわかっていない。この遺伝子が特定されれば、「MDS発症をめぐる細胞内シグナル伝達が明らかになり、これをもとに、より有効な分子標的治療薬の開発に結びつく可能性もある」と、朝長氏は既に“アザシチジン以降”を見据えてもいる。

 発売直後の市販後調査が数100例を目標に実施されるが、使用施設は特に限定されない。重点監視する副作用は、骨髄抑制と腎排泄型の薬剤であることから腎機能検査を励行する必要はあるが、血液腫瘍の患者を診ている医師ならば、特段に困難なフォローではないといわれる。どのような使用方法を確立すれば患者の利益を高めることができるか。ボールは医師の側に投げられたといえるだろう。