遺伝子の変異といっても、その実体は多様だ。遺伝子の点突然変異かもしれないし、欠失かもしれない。CMLが増えることから転座が起こっていることもほぼ確実だ。さらに最近注目されているDNAメチル化制御に関わる遺伝子に変異が入った可能性もある。

 なぜDNAメチル化が関係していると推測されるのか。脱メチル化を主な機序とするアザシチジンがMDSからAMLへの移行を抑制し、患者の予後を改善することが明らかになったことは有力な傍証といえる。

脱メチル化機能の発見で復権
 アザシチジンは核酸化合物の1種であるシチジンの誘導体。今年1月にMDSの治療薬として製造販売が承認された新薬であるが、その誕生はずっと古く、1960年代には合成されていた。

 同時期に合成された薬剤のシタラビン(Ara-C)は白血病の治療薬として実用化されたが、アザシチジンは臨床試験でAra-Cを上回る効果を得ることができず、治療薬として開発が見送られた過去がある。アザシチジンが再び脚光を浴びるのは、DNAのメチル化が腫瘍の発生に関係していることが認められるようになってからだ。

 DNAの転写はメチル化修飾によって制御される。正常細胞でも遺伝子の転写抑制(サイレンシング)のための手段として働いているが、一部の腫瘍化抑制遺伝子のCpGプロモーター領域がメチル化されることによって、腫瘍化が促進されることが明らかになっている。

 アザシチジンは、その核酸に類似した構造から増殖中の細胞の合成されるDNAに組み込まれる。DNAに組み込まれるとDNAメチル化反応を触媒する酵素であるDNAメチルトランスフェラーゼ(DTMT)と不可逆的に結合し、遊離DTMTを枯渇させ、DNA全体で低メチル化状態となり、結果的にがん抑制遺伝子のメチル化も解除され、脱腫瘍化が生じると考えられる。

 さらにアザシチジンは構成する糖がRNAタイプのリボースであることから、合成されるRNAに組み込まれ、たんぱく質の合成阻害を引き起こし殺細胞を示す。このような腫瘍細胞の脱分化と殺細胞という2つの働きによってMDSを治療するのがアザシチジンの特徴だ。

Highリスク患者の生存期間を改善
 臨床試験としては、米国では第2相と第3相それぞれ2つが実施され、国内では第1/2相試験が行われたが、それらの試験成績が国内の製造販売承認申請に用いられた。最も重要な試験に米国で2003年11月から高リスクMDS患者を対象に行った、生存期間を腫瘍評価項目とする第3相試験(AZA-001試験)がある。IPSSのHighリスクとInt-2リスクに相当する358名の患者をアザシチジン群と通常治療群に分けて、ランダム化に先立ち通常治療(支持療法、少量シタラビン療法、標準化学療法)を行った後に、各治療とアザシチジンと通常療法が均等になるようにランダム化している(図2)。