骨髄異形成症候群(MDS)に新しい治療薬アザシチジン(商品名「ビダーザ」)が登場する。既に1月に製造販売が承認されており、近く発売される見込みだ。決定的な治療薬が乏しかったMDSに対する待望の治療薬であることに加え、脱メチル化薬という新規の作用機序でも注目されている。


写真1:JR九州の浦上駅の背後に建つ日本赤十字社長崎原爆病院。1958年に総合病院として設立。

 長崎市の中心部に位置する日本赤十字社長崎原爆病院(写真1)は受診する患者の3人に1人が被爆者という医療機関だ。「開院以来多くの被爆者を継続的に診療してきたが、そうした被爆者患者群の中で最近、MDSの患者が増えてきた」と院長で造血器腫瘍が専門の朝長万左男氏(下の写真2)は語る。

 同氏によると、原爆投下から10年の間は慢性骨髄性白血病(CML)や小児の白血病患者が急激に増えたが、その後は徐々に減少した。代わって、甲状腺がんや肺がん、乳がんなどの固形がんを発症する患者が増えていく。これらの固形がんの発症は、被爆後40年近辺で新規患者の発生率はプラトーに達したが、一方で高齢化に伴って発生する造血器腫瘍が増えてきた(図1)。その筆頭がMDSだと朝長氏は指摘する。

DNAメチル化とMDSとの関係
 MDSは白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫とともに主要な造血器腫瘍の1つだ。罹患期間が延びると、予後が悪い急性骨髄性白血病(AML)へと約30%が移行するという特徴がある。染色体の検査をもとにIPSS分類が行われ、Highリスク、Lowリスクとその間のInt-1、Int-2の合計4つのリスクに分類されている。Lowリスクの生存期間中央値は5.7年だが、Highリスクとなると0.4年間ときわめて短い(表)。

写真2:「被爆者の長期的なフォローががん発症メカニズムの解明に役立つ」と朝長万左男氏は力説する。

 日本国内の患者数は約9,000人とされているが、高齢化の進展とともにこの数自体は増加する傾向にある。朝長氏は医学的なフォローを続けてきた被爆者が高齢化に伴いMDSが増えてきた事実は、一般人のがんを考える上でも大きな意味を持つと確信している。「現在の被爆者の多くは20歳未満で被爆した人々。その中に一般人を上回る頻度でMDSなどのがんが発生しており、生涯にわたって被爆の影響が持続することを示している」(朝長氏)。その理由として被爆によって造血幹細胞に遺伝子変異が入った可能性があるという。現在、長崎大学と共同でMDS発症被爆者の幹細胞の遺伝子解析に取り組むための準備を進めている。