吉田氏はadjuvant surgeryの有効性を前向きに検討するために、前向き無作為化比較試験(第2相試験)を岐阜県下の医療機関の参加を得て進める計画を明らかにした(図4)。TS-1にドセタキセル、さらにCDDPを加えた化学療法を実施し、部分奏効(PR)、完全奏効(CR)などの腫瘍縮小効果が認められた症例を無作為化し、2群に分け、1群にadjuvant surgeryと化学療法を実施、もう1群には化学療法だけを行う。まず主要評価項目は縫合不全、膵液漏、腹腔内膿瘍などの術後合併症発生割合とし、副次的評価項目は全生存期間、無増悪生存期間、組織学的奏効度、切除率、奏効度にするという。

 吉田氏は「adjuvant surgeryの対象となる患者の割合はStage4の胃がん患者全体の20%くらいになるのではないか。いずれにせよ最終的な評価のためには1次治療奏効例に対する第3相臨床試験が必要」と語っている。

殺細胞型抗がん剤による 治療の個別化は可能か
 術後補助化学療法ではないが、胃がん治療薬の個別化の先駆けになるのは、3月10日に「HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃癌」に効果効能の追加が認められたトラスツズマブということになるだろう。
 胃がん細胞に表出しているHER2抗原を標的にする抗体医薬で、既に転移再発と術後の乳がんに対する標準的な治療薬となっている。進行性胃がん患者におけるトラスツズマブの有効性を証明した国際試験ToGA試験では、日本は韓国に次いで世界第2位の症例数を集めている。
 トラスツズマブのように標的がバイオマーカーとして利用できる薬剤では個別化が比較的容易だ。しかしがん細胞特異性が高い標的を持たないTS-1のような殺細胞型の薬剤では、こうしたバイオマーカーの探索は容易ではない。国立がん研究センター東病院内科医長の土井俊彦氏は、胃がん治療における個別化の可能性について「殺細胞型抗がん剤で有効性を個別化することは無理だと思う」と語り、分子標的治療薬ではない殺細胞型の抗がん剤の個別化は有効性ではなく、副作用の回避という観点から追求されるべきという考えを示した。
 がん化学療法では個別化を目指した様々な取り組みが進められている。乳がんではホルモン受容体のプロファイルを抜きにして、治療薬を処方することはできない。胃がんでも治療方針の決定に際して組織型が重視されてはいるものの、HER2抗原のほかに臨床に使えそうなバイオマーカーの存在は明らかになっていない。進行胃がんでは、薬剤の選択に当たり、HER2検査が必須となるだろう。術後補助化学療法で個別化の意義が見出せるか、またHER2抗原以外のバイオマーカーが発見されるか、ACTS-GCのバイオマーカー探索が注目される所以である。