ACTS-GC試験に参加した1059例の症例のうち、829例のサンプル提供を受け、現在解析が進められており、近く測定を終える予定だ。防衛医科大学校教授の市川度氏によると、「HER2、EGFR、VEGFRの発現と予後、効果との関連については6月のASCO2011で発表する。TS-1の代謝に関わる酵素(TS、DPD、OPRT)についても追って公表する」という。

TS-1隔日投与法の第2相臨床試験の報告も
 TS-1のコンプライアンスを維持するために必要な対策は何か。この課題を抱えているのはTS-1だけではなく、多くの経口剤に突きつけられている問題といえる。在宅で服薬する場合、わずかな副作用のために、自分で判断して飲むことをやめてしまう患者が多い。

 1つの方法は、有効性を維持しつつ副作用がより少なくなるような用法用量を検討することだ。TS-1では、動物試験で下痢などの有害事象が減少することが確認されたことから、現在の標準的投与法である“4週間投与2週間休薬”に代わる、“隔日投与法”の臨床試験が始まっている。

 山陰胃癌化学療法研究会の建部茂氏(鳥取大学医学部病態制御外科講師)らは、「TS-1の完遂性向上」を目指した隔日投与法の多施設共同前向き研究を実施、その結果を報告した。Stage2/3胃がんの術後患者73名を標準的投与群と隔日投与法群とに分けて比較したところ、治療完遂率(主要評価項目)は標準群で80%、隔日投与群では92%であり、1年生存率はそれぞれ95.5%と100%、1年無再発生存率は76.2%と89.1%となった。第2相試験の結果であり、最終的な結論は出せないが、建部氏は、隔日投与法が「Stage2/3術後補助化学療法の治療オプションの1つとなる可能性がある」と結論している。

患者体重が落ちると治療継続性も落ちる?
 もう1つの対策候補として注目されるのが、意外なことに患者の栄養状態の改善だ。市立堺病院外科の川端良平氏らは、同院でTS-1補助化学療法が完遂できた14例と減量・休薬・中断が必要になった13例の患者の背景因子、治療期間中の血液、栄養学的指標を検討している。治療期間中の血液・栄養学的指標と治療完遂性の関連を単変量解析で検討すると白血球数最低値(p<0.001)、好中球数最低値(p=0.002)に加え体重減少率(p<0.0001)で相関がみられたが、多変量解析すると治療期間中の体重減少率がTS-1の治療継続性に最も強い影響を与える因子であることが明らかになった。川端氏は「TS-1完遂率を改善するためには治療期間中の栄養状態の把握や適切な栄養学的介入の必要性があることが示唆された」と述べている。体重減少がTS-1継続率を下げる原因となるのかは、前向き試験を行って確認する必要がある。そこで、川端氏らは栄養学的な介入を併用するRCTを計画していることも明らかにしている。

 経口剤の治療継続性を確保するために、医師とコメディカルが連携しての副作用のコントロールの重要性が指摘されている。その際には治療中止の原因として、栄養状態にも考慮していく必要性にも関心が集まっている。「特に胃がんの手術は大腸がんなどに比べ、術後の体重減少が強く出る傾向があり、術後患者の“体重をケア”する意義は大きい」(神奈川県立がんセンター消化器外科の吉川貴己氏)という声もある。

 吉川氏や癌研有明病院消化器外科医長の比企直樹氏などが、栄養補助サプリメントの使用を組み込んだ胃がん術後補助化学療法の臨床試験を計画している。今後の胃がんの術後治療と栄養療法の組み合せに期待が集まるかもしれない。

緩和に移行すると化学療法は不要か?
 積極的な治療が終了した後には緩和主体の治療に移行する。世界保健機関(WHO)が治癒もしくは生存期間の改善を目指した治療から緩和医療に徐々に切り替えることを推奨している、「ある日を境に治療から緩和への明確な切り替える」というのは遅れた医療ということになっている。しかし、現実にはある時期から「化学療法などの積極的な治療は一切行わない」医療に突入することになる。特別シンポジウム「切れ目のない胃がん治療」のセッションでは、緩和医療における化学療法のあり方について、がん・感染症センター都立駒込病院院長の佐々木常雄氏が問題を提起した。

 2009年1月に東京大学病院ではがん患者や医師を対象にした死生観に関するアンケート調査を実施している。それによると、がん患者の81%は「最後まで病気と闘うこと」が重要と回答したが、そう考える医師は19%、看護師は30%に留まった。こうした患者と医療者側の認識のギャップをどう捉えるべきかは意見が分かれるはずだ。「患者の意志を最後まで尊重すべき」という考えもあれば、「末期に対する正確な情報が不足している」「人は必ず死ぬという自覚が足りない」という冷厳な指摘も間違っているとは言えない。

写真4 総会の直前の2月23日にカペシタビンが治癒切除不能な進行・再発進行胃がんへの効能・効果追加が承認された。胃がん治療のフッ化ピリミジン薬はTS-1とカペシタビンの2強時代に突入することになった。

最後まで闘うという意志も尊重されるべき
 この東大病院の調査を引用しつつ佐々木氏は、駒込病院で実施しているセカンドオピニオンの受診目的の集計についても報告した。セカンドオピニオンを求めて同院を訪れる患者219例の34%は「治療抵抗性と言われた。緩和しか治療法がないのか」というものであり、26%が「現在の治療効果がなくなった場合、次の治療はあるのか」というもので、いずれも可能な限り治療を続けたいという患者が少数派ではないことを示す結果となった。

 佐々木氏は、「医療者は、抗がん剤が効かなくなると、緩和のみが既定路線と考えているが、それで良いのか」と疑問を表明した。駒込病院呼吸器科グループは、最終化学療法がゲフィチニブかエルロチニブなどのEGFR-TKI(上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤)であった非小細胞肺がん(NSLC)患者33名について明らかにPD(病勢進行)となった後で、EGFR-TKIを継続した群と1カ月以内に中止した群の生存期間をレトロスペクティブに比較した結果を昨年の日本呼吸器学会で報告している。