期待したSTART試験の結果は微妙
 消化器科の医師たちを「ぐずぐずさせていた」もう1つの理由は、進行していたSTART試験(JACCRO GC-03試験)の結果を待っていたためでもある。これは、進行再発胃がん患者を対象としたドセタキセル(DOC)とTS-1併用療法(SD)とTS-1単独療法の第3相比較試験だ。第2相試験では忍容性が確認できたことから、SPよりも患者への負担が少ないレジメンとして、臨床現場では未治療進行胃がんを対象にしたSTART試験のSDレジメンがTS-1単独を凌いでくれることを医師たちは期待していた。その結果が今年1月の米国臨床腫瘍学会消化器分科会(ASCO-GI)で発表されたが、内容はなんとも中途半端なものだった(図3)。

 主要評価項目ではSDもTS-1も同等という結果となったが、副次評価項目である無増悪期間(TTP)ではSDレジメンが勝った。この結果をめぐって、p3の術後補助化学療法の前向き試験ではどのような設計にすべきか、専門家の間でも結論が出ていない。

 TS-1vs.SDとすべきか素直にTS-1vs.SPを行うべきか?結果の解析は複雑になるが、術前化学療法をも組み合わせた試験を主張する専門家もいる。単独の医師グループでは限界がある。日本全国の臨床試験グループの協力を得て、1000人規模の登録を実施し、できる限り短期間に結果を出せる設計にすべきだという意見もある。

 START試験の詳細な解析はまだ終了していない。この結果は6月に米国のシカゴで開催される米国臨床腫瘍学会総会(ASCO2011)で発表される予定だ。「この結果から新しい術後補助化学療法の試験を組むべき」と佐野氏は語る。

Stage2ではより負担が少ない方法が求められる
 Stage2にTS-1の術後補助化学療法を実施すべきかどうか。これもACTS-GC試験が残した課題の1つだ。1年生存率が84%とTS-1使用群では高い成績が得られているが、手術単独でも74%の1年生存率がある。10%の上乗せ効果といっても、そもそも術後補助化学療法が必要ない患者に実施されている危険性がある。どのような患者に投与すべきか、どのような患者は投与しなくてもよいのか。深達度や転移リンパ節の数などではその薬効予測ができないことが明らかになっており、新しいバイオマーカーの探索研究が不可欠な状況だ。

 ACTS-GC試験では参加者から切除組織の提供を受けて、予後と相関する因子の検索が始まっている。特にTS-1を使用しても30%には耐性が認められる。こうした患者群に対してはTS-1とは別の薬剤による治療を提供する必要がある。そこでACTS-GC試験バイオマーカーの探索事業が進行している。提唱者は一昨年に急逝した慶應義塾大学医学部教授の久保田哲朗氏だ。