日本を中心の標準治療の追求が必要
 胃がんの術後補助化学療法の標準治療といっても、その内容は世界各地域で異なっている。「この分野では世界共通の標準治療というものが存在しない」と佐野氏は指摘する。

 ACTS-GC試験と同時に欧州のMAGIC試験(術前後にECF:エピルビシン+CDDP+5-FUを実施)、米国のINT0116試験(術後に放射線照射を実施)が登場した。いずれも手術単独を対照とした試験で、有効性が確認され、期せずして3極のそれぞれで胃がん術後補助化学療法の標準レジメンとして確立した。

写真2 今回の会場は青森県三沢市の温泉旅館青森屋(写真)と三沢市公会堂。学会参加者には無料で温泉に入ることができる特典が用意された。

 日本の手術単独の成績は欧米に比べて高く、欧米で確立したからといってその治療法をそのまま日本に導入すべきという議論にはならない。「欧米と日本の手術成績の違いが出る理由は、手術の技量よりも、診断能力の差に負うところが大きい。きちんと診断し、同じStageの症例を登録することができる技術力が大きくモノを言っている」と佐野氏は指摘する。

 ACTS-GC試験においてStage3ではTS-1単独では10%上乗せ効果があったが、「これで満足はできない」と佐野氏はいう。TS-1単独を上回るTS-1+αのレジメンが求められている。

 佐野氏は術後補助化学療法の新規探索の方法論として、(1)進行胃がんで効果が確認されたレジメンが採用できるかどうか、(2)術後補助化学療法として使用可能であるかどうか、(3)標準的なレジメンに対して優越性もしくは非劣性があるかどうか―の3点から検討する必要があると指摘した。

 進行胃がんの標準レジメンとしては既にTS-1+シスプラチン(CDDP)がある。TS-1とTS-1+CDDP(SPレジメン)を比較したSPIRITS試験では全生存期間(OS)でハザード比0.77(p=0.04)で、TS-1+CDDPが標準治療として確立している。このSPRITS試験の結果からは当然、TS-1+CDDP(SPレジメン)による術後補助化学療法が第1候補になるのは自然な成り行きといえる。「このエビデンスを出したSPRITS試験もしくはACTS-GC試験の結果が出た時点で、Stage3のレジメンを追求していくべきだった。しかし、なぜかその試験は始まらず、皆ぐずぐずしていた」と佐野氏は説明する。

写真3 参加登録も山車灯籠の前。

 なぜぐずぐずしていたのか?その理由はSPの副作用が強いためだ。

 TS-1+αのレジメンに求められることは当然のことながらTS-1よりも有効性が高く、なおかつTS-1よりも低い毒性であることだ。

 「進行再発胃がんでは、毒性が高くても有効性の向上が期待できるのであれば、患者に説明し、時に励まし使うことができる。しかし、術後では補助化学療法を行わなくても治癒する患者が多く含まれる。こうした患者群に強い治療が許されるかどうかが問題になる。手術直後の体力が低下した患者にSPのような毒性が強いレジメンを使うことができるかどうか、多くの医師にはためらいがある」と佐野氏は言う。その傍証となる臨床試験が、大阪のグループによって実施されている。

 腫瘍内科医がいる5施設でD2郭清ができた患者を対象にSPレジメンを3コースを実施し、その後でTS-1のみを使う試験を行った。その結果、登録した半分の患者が音をあげた。そこで、最初の1コースはTS-1のみを使い、その後でSPを実施するというレジメンに変更し、なんとか試験を行えるようになったが、改めてSPを術後補助化学療法に使うことの難しさを印象づける結果でもあった。