第83回日本胃癌学会総会が青森県三沢市で3月3〜5日の3日間にわたって開催された。
術後補助化学療法では、胃がん手術症例を対象としたTS-1臨床試験ACTS-GC試験の5年後の追跡調査の結果をもとに、より高い治療成績を得るための方策が議論の的となった。トラスツズマブを嚆矢とする個別化医療にも関心が集まった。このほか、緩和医療における化学療法のあり方、Stage4胃がんに対する“adjuvant surgery”の可能性などが討議された。


 現在の日本の胃がん治療はStageごとに治療法が分かれている(図1)。それでは今以上の治療成績を上げるためにはさらに何が必要か。今回の日本胃癌学会総会では、治療方針を根本的に見直すべきという斬新な提言が見られた。

ACTS-GC試験から始まる術後療法の新展開
 Stage2/3の胃がんのD2郭清手術後の補助化学療法におけるTS-1(S-1)単剤治療の有効性を確認し、2006年に有効中止となったACTS-GC試験(囲み記事参照)。その5年後の追跡調査の結果が、2010年の欧州がん治療学会議(ESMO)や日本癌治療学会などで北里大学医学部外科学講師の桜本信一氏らによって報告された。今回の日本胃癌学会総会では、この結果を一歩進めて、生存期間をさらに延長させる方策について突っ込んだ議論が展開された。

 まずACTS-GC試験の5年間の追跡調査の結果を振り返っておこう。

 図2に見るように、ACTS-GC試験の中間解析で0.68(95%CI,0.52-0.87)だった全生存期間(OS)のハザード比は、5年後は0.669(95%CI,0.540-0.828)となり、高い治療効果が維持されていることが確認された。無再発生存期間(RFS)については中間解析時点の0.62(95%CI,0.50-0.77)が今回の解析では0.653(95%CI,0.537-0.793)。

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 TS-1群の5年生存率は、Stage2が84.2%、3Aが67.1%、3Bが50.2%となった。一方の手術単独群ではそれぞれ71.3%、57.3%、44.1%でハザード比はそれぞれ0.509、0.708、0.791とStageが早くなる方がTS-1補助化学療法の有効性が高くなる傾向にあった。Stage2/3胃がんの術後のTS-1単独療法の有効性が改めて確認された。

写真1 第83回日本胃癌学会総会の会場風景。今まで任意団体だったが、社団法人となることを今回の総会で正式に決定した。

 一方で、この結果から胃がんの術後補助化学療法が抱える新しい課題も見えてきた。1つは治療効果が比較的低かったStage3への対策だ。このStageにはTS-1単独を上回る強力なレジメンを導入する必要性が出てきた。総会では後述するように、癌研有明病院消化器センター部長の佐野武氏が特別シンポジウム「術後化学療法」で「次のRCT(無作為化比較試験)は何か?」をテーマに講演している。

 もう1つは、TS-1単独もしくはほかの薬剤と併用するにしても、TS-1自体の使用継続率を高く維持するためにどのような手立てを講じていくべきかという問題だ。ACTS-GC試験では、1年間TS-1を服用するプロトコールになっていたが、1年を通して服用を続けた患者はTS-1群全体の65.8%に留まった。この「継続率を高く維持するためにはどのような対策を取るべきか?」が会期中、随所で議論された。