隔日投与で小腸粘膜の萎縮性変化や炎症が軽減
 隔日投与の仮説を生体で証明できるかが次のポイントになった。白坂氏らはがん細胞株MKN28を移植したヌードマウスに、TS-1の10mg/kgを連日投与した場合と隔日投与した場合の腫瘍の大きさを比較した。投与期間は連日で14日、隔日で28日とし、総投与量を140mg/kgで同じにしている。その結果、連日投与と隔日投与は少なくとも同等以上の効果が認められた(図2)[参考文献(2)]。

 「より重要な結果」と白坂氏が力をこめて指摘するのが、マウスの小腸粘膜へのダメージの比較だ。連日投与群では萎縮性変化や炎症細胞の浸潤が7例中6例で認められたが、一方の隔日投与群では潰瘍や炎症性細胞の浸潤を認めたのは7例中1例にとどまった(図3)[参考文献(2)]。このように、1日おきの休薬で小腸粘膜のダメージが少なくなるのは驚愕である。

臨床研究のプロトコールを、どのようにとらえるか
 問題は臨床試験だ。定着している4投2休を改めるには、大規模な前向き試験が必要だが、現在、臨床試験が医師主導の形で進められている。2010年11月から、(財)がん集学的治療研究財団(http://www.jfmc.or.jp/)の特定研究として臨床試験JFMC43-1003(班長:大阪市立大学大学院腫瘍外科教授の平川弘聖氏)が始まった。これは、切除不能進行・再発胃がん症例に対する初回化学療法として、TS-1の連日投与と隔日投与のランダム化第2相試験で、連日投与40例、隔日投与80例を目標症例として全国22施設が参加して実施されている。主要評価項目は安全性と無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)となっている。いずれもTS-1単剤投与で行われる。

 切除不能進行・再発胃がんに対しては、国内で行われたSPIRITS試験とJCOG9912試験の成績から現在の標準治療としてTS-1+シスプラチン(CDDP)が最新の胃癌治療ガイドラインでも推奨されている[参考文献(4)]。しかし、実際は副作用のため減量したり、TS-1単剤で使用されている例も少なくない。JFMC13-1003試験がTS-1単剤で実施されたとしても、臨床的な価値は高いとみられている。今後、TS-1単剤における隔日投与の重要性が確立すれば、併用レジメンにおける有効性が検討される可能性がある。

 隔日投与がTS-1の新しい可能性を拓くことになるのかどうか。現時点では結論が出ておらず、JFMC43-1003試験をはじめとする進行中の2から3つの試験の結果が待たれるところだ。しかし、一部の医師からは臨床試験の結論を早く知りたいという要望が白坂氏のもとに届くようになった。最近、小児がん専門医からの相談も受けるようになった。白坂氏は「小児がんの治療で最も重要なことは副作用が少なくさらに2次発がんの危険性が少ない抗がん剤を用いることである。食事ができ、外で自由に遊べる外来治療が本道になってほしい」と語っている。

[参考文献]
(1)Clarkson B. and Ota K. et al. : Cancer 1965;18:1189-213
(2)Arai W. et al. : Int J Clin Oncol.2008;13:515-20
(3)Hosoya Y, Sakuma K, et al. Int J Clin Oncol 2010, in press(Apr)
(4)日本胃癌学会、胃癌治療ガイドライン医師用2010年10月改訂第3版、金原出版