新規の免疫調節薬(IMiDs)のレナリドミドがこのほど発売され、多発性骨髄腫の治療に使われている世界の標準治療薬3種類が日本国内で使用できることになった。既存薬と異なった副作用プロファイルを持つうえ、催奇形性の懸念もあることから、妊婦に渡らないために厳格な薬剤管理が必要になる。医師、薬剤師、患者を登録するとともに情報を瞬時に集約するハンディ端末という新システムも導入され、注目されている。催奇型性のある薬剤をどこまで厳格に管理すべきかも、この薬剤を考える上で重要なポイントだ。


写真1:癌研有明病院の照井氏。「レナリドミドは簡単に処方できる薬ではない。看護師、薬剤師を含めたチームを作って情報をスタッフ間で共有した上で使用すべき」と語る。

 再発難治性の多発性骨髄腫の治療薬としてレナリドミドが今年7月に発売となった。

 多発性骨髄腫は、免疫グロブリンを産生する形質細胞のがん。体中の骨髄で発生することから“多発性”という修飾語が冠されている。腰痛など骨の痛みを主訴に整形外科を受診し、血液専門医を紹介されて、骨髄腫が産生するMたんぱく(免疫グロブリン)を血液中、尿中で検査するなどして診断が確定するというケースが多い。発症率は人口10万人あたり男性2.2人、女性1.7人と推計されている(出典:「がんの統計2009」)。死亡者は年々増加しており、2008年の死亡者数は男性2,087人、女性は2,059人で、合計4,146人は全がん死亡者数の1.2%に相当する(出典:「人口動態統計によるがん死亡データ」)。

 これまで治療薬には、プロテアソーム阻害剤のボルテゾミブ(2006年承認)、免疫調節薬(IMiDs)のサリドマイド(2008年承認)があった。レナリドミドは3番目の治療薬ということになるが、その登場は「単純に治療薬が3つになったということ以上の意味を持つ」と癌研有明病院・血液腫瘍科担当部長の照井康仁氏(写真1)は説明する。

 「多発性骨髄腫の治療では、使用している薬剤に抵抗性になっても、6カ月間ほど間隔を取ることによって、感受性が回復し、再投与できることがある。現在の治療の目標はできる限り、完全寛解(CR)に持ち込み、次の治療につなぐというもの。交代できる薬剤が増えれば、薬物療法が有効な期間を延ばすことも可能になる。最初の薬剤が効かなくなっても、まだ2剤あるという安心感は患者、医師ともに大きい」。

多彩な作用で注目されるIMiDs
 サリドマイド、レナリドミドはともに免疫調節薬(IMiDs)に分類される。IMiDsはサイトカイン産生調節作用、造血器腫瘍細胞への増殖抑制作用、血管新生阻害作用を持つ薬剤を指す。特にレナリドミドの場合、作用機序は完全にはわかっていないものの骨髄腫細胞へのアポトーシスを誘導する「殺腫瘍作用」、免疫細胞に働きかけ、免疫を賦活させる「免疫調節作用」とを合わせ持つ。もともとレナリドミドは、サリドマイドの誘導体。構造式を見るとレナリドミドはサリドマイドに極めて似ている(図1)が、その効果はサリドマイドに比較し、免疫調節作用、血管新生抑制作用、抗炎症作用で1000倍、抗腫瘍活性が約100倍といわれている。

 再発または難治性の多発性骨髄腫患者を対象とした海外で大規模ランダム化第3相試験MM-009とMM-010との2種類が実施されている。図2、3に示すMM-009/010併合解析はレナリドミド+デキサメタゾン(RD)とデキサメタゾン単独(D)に比べ奏効率(RDvsD:60.6%vs21.9%)、無増悪期間中央値で(13.4カ月vs4.6カ月)と大きな差をつけた。一方、全生存期間(38.0カ月vs31.6カ月)と有意差が認められなかったが、これはクロスオーバーを実施した結果と考えられている。国内第1相試験では、試験の解析対象となった6人の全員に部分奏効以上の奏効率が認められている。