乳がんで普及しているドーズ・デンス化学療法を卵巣がんで検証する動きが世界中で活発なものになっている。その口火を切ったのが日本で行われ、2008年のBest of ASCO演題にも選ばれたJGOG3016であった。ここでは術前化学療法と術後化学療法におけるドーズ・デンス化学療法の意義を国立がんセンター中央病院医長の勝俣範之氏に解説してもらった。


 上皮性卵巣がん(以下卵巣がんと省略)の日本での罹患数は7418人(2002年)、死亡数は4435人(06年)であり、罹患した患者の約60%が亡くなっており、難治性のがんであるといえる。女性のがんの中では乳がんと同様に年々増加傾向にある。卵巣がんは化学療法に感受性の高いがんとして知られているが、最近の化学療法の進歩について紹介する。

手術で分かれる術前化学療法の評価
 卵巣がんでは、初回にできるだけ腫瘍を取り除く減量手術(デバルキング手術)とそれに続く化学療法が標準療法とされてきた。これに対して、術前に化学療法を施行した後、デバルキング手術を行う術前化学療法の有用性については以前から報告されてきたが、これまで第3相比較試験は実施されていなかった。

 08年の国際婦人科腫瘍学会(IGCS)では、Stage 掘銑鹸の卵巣がん、卵管がん、腹膜がんを対象として、術前化学療法 vs. 初回デバルキング手術の第3相比較試験が発表された。この試験は、欧州がん臨床研究グループ(EORTC)とカナダ国立がん研究所(NCIC)との共同試験であり、1998〜06年まで9年間かけて、718人の患者が登録された。術前化学療法群は、3コースの化学療法後にデバルキング手術を行い、その後3コース化学療法を行う。初回デバルキング手術群は、初回手術の後、6コースの化学療法を行う。経過観察期間中央値4.8年後、主要評価項目である全生存期間中央値30カ月(術前化学療法群)vs. 29カ月(デバルキング手術群)で差はなく〔ハザード比0.98;95%信頼区間(CI):0.85-1.14〕、無増悪生存期間も11カ月 vs. 11カ月と差はなかった(ハザード比 0.99;95% CI:0.87-1.13)。

 この試験の結果から、術前化学療法は、進行卵巣がんの標準治療の治療オプションとなると考えられるが、一方で、デバルキング手術群で、残存腫瘍径を1儖焚爾箸垢觴蟒僉淵プティマル手術)をされた割合が48%と低く、無増悪生存期間も11カ月とこれまでの報告よりも悪い結果であったことが批判されている。

 米国での婦人科腫瘍医の専門医がいる施設では、Stage 掘銑鹸の卵巣がんに対してオプティマル手術の割合が70〜80%であると報告されている。また、オプティマル手術が行われた場合には、オプティマル手術が行われなかった場合と比べて明らかに予後改善が認められるという多数の報告がある。術前化学療法 vs.デバルキング手術の比較試験を計画した場合、デバルキング手術群のオプティマル手術率を向上させないと、結果として不完全手術となり、さらにその結果として、両群の差が縮まってしまうことになるというわけである。

 日本でも、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が同様の術前化学療法 vs. デバルキング手術の比較試験を行っている。現在まで200例以上の登録(目標登録数300例)がなされているが、海外から批判されないように、高い頻度でのオプティマル手術の施行が望まれるところである。

卵巣がんの標準化学療法
 現在、進行卵巣がんに対する初回化学療法の標準治療は、パクリタキセル(PTX)+カルボプラチン(CBDCA)併用(TC療法、ともに3週ごと1回投与)である。さらなる臨床成績の向上を目指して新しい治療法を探る努力が続けられている。しかし、卵巣がんの化学療法は、PTXの登場(1996年New EnglandJournal of Medicine誌に発表)以来、目覚ましい進歩が見られていなかった。

 唯一、腹腔内化学療法が、卵巣がんの治療成績を向上させる1つの方法として注目されている。カテーテルトラブルが多いことや、腹腔内化学療法レジメンとして、毒性の強いシスプラチンが用いられていることなどから、腹腔内化学療法のエビデンスを輩出している米国でも標準治療とは認識されていない現状にある。また、新たな薬剤であるトポテカン、ドキシル、ゲムシタビンをTC療法に組み合わせるランダム化比較臨床試験が行われた(図1)が、従来のTC療法を上回る結果は得られなかった(図2)。