ダヴィンチを導入した日本で唯一の民間病院
長久保病院(国立市)
 大学病院や国立病院の一部に導入され始めたばかりのロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RALP)を日常診療として開始した民間病院がある。東京都国立市の長久保病院だ。昨年9月にダヴィンチを購入し、現在、操縦できる医師4人を擁し、すでに11例の手術を行っている。患者負担は、1件75万円で始めたが、3月から120万円に値上げした。それでも採算からはほど遠い。
採算よりも安全性と有効性を優先
 同病院副院長で、自身、6例の手術を経験した桑原勝孝氏は「すぐに採算を取るつもりはない」と語る。長久保病院は泌尿器科の専門病院で、泌尿器にかかわる手術の多くを手がけてきた実績があり、開放による前立腺全摘除術も行っていた。同院がダヴィンチに注目した理由は安全性と有効性だと桑原氏は説明する。「すでに米国では前立腺全摘除術の80%はロボットを使って行われている。東京医大や海外からの報告に接して、前立腺全摘除術はロボットが主流になると確信した」という。院長の長久保一朗氏が、東京医大教授の橘政昭氏と同じ慶應義塾大学の卒業生で以前から面識があったことも、導入へ踏み切る一因となった。
 同院でのRALPの症例が10 例に達したこと契機に、桑原氏はその成績をまとめた。手術時間は平均396分と長めだが、経験を重ねるにつれ、減少傾向にある(図)。出血量は平均237mlで輸血した症例はなかった。術中合併症もなし。尿道カテーテル留置期間は、開放で1週間程度を要することが普通だが、RALPでは4.8日と短縮することができた。術後の後遺症としてしばしば問題になる尿失禁が認められる期間は1例のみ6カ月で、残りは3カ月以下、3例は1回も尿失禁がなかった。
空いた時間は折り鶴で自主トレーニング
 採算性に加えダヴィンチ導入時に問題となるのが術者のトレーニング。現在、製造元の米国Intuitive Surgical社は、操縦する医師に米国内での実地研修を義務付けている。長久保病院の医師4人も、渡米してトレーニングを受けた。
 「医師らは暇を見つけては練習している」と桑原氏は語る。長久保病院の手術室は病院の3階にあるが、ダヴィンチ使用時以外は地下のレントゲン保管庫の一角に保管されている。ここが医師らの練習グランドとなる。鉗子を駆使してモデル臓器の尿道―膀胱の吻合を行ったり、時に折り紙で鶴を折ることもあった。桑原氏自身は、これまでに50羽ほど折った。「当初、1羽折るのに30分を要したが、慣れてくるにつれ20分〜15分になった」そうだ。「当院は単科病院なので、他の診療科とダヴィンチを共用している大学病院よりも練習に使う時間を確保できる。その点では恵まれているかもしれない」と桑原氏は語っている。