昨年は晴れて販売が承認された手術支援ロボット「ダヴィンチ」(daVinci)。このダヴィンチを駆使して、日本で最も多くのロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RALP)をこなしてきたのが東京医科大学泌尿器科学教室だ。現在のところ、限られた医療機関にしか導入されていない手術支援ロボットだが、同科主任教授の橘政昭氏は「今年は本格的に普及が始まる年になり、やがて体外衝撃波結石破砕術(ESWL)並みに普及する」と断言する。


ダヴィンチを使用した手術風景。中央にある機器がダヴィンチ。感染症防止のためにドレープで覆われている。右側にコンソールが見える。(写真◎柚木裕司)

 「ロボットが手術する」というと、鉄腕アトムやロビタのような人型ロボットが執刀する場面を想像する人は多い。実際に東京医科大学附属病院で行われている手術ロボット「ダヴィンチ」による手術を見ると、それは鉄腕アトムというよりもガンダムに近い。術者は患者が横臥する寝台とは離れた操縦席コンソールに身をかがめるように入り、術野を投影する3次元画像のスコープに額を当ててマニュピレーターを操作する。

 行われていた手術は前立腺全摘除術。前立腺特異抗原(PSA)による前立腺がんスクリーニングが行われ、限局性の段階で発見される前立腺がんが増加しており、長期生存を可能にする治療法として件数が増えている手術だ。術式には開放手術と1997年から始まった腹腔鏡下手術があるが、これらに加え近年は、米国Intuitive Surgical社が開発した手術用ロボットのダヴィンチを使用したロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術(roboticassistedlaparoscopic radicalprostatectomy;RALP)が普及している。東京医科大学泌尿器科学教室は、国内で突出した件数のRALPをこなしてきた実績を持つ。

 この日の患者は76歳で、PSA値は5.1(ng/ml)。朝の9時10分に手術室に搬送されると、ポートの作成を行った後、10時には同科准教授の吉岡邦彦氏の執刀による手術が始まった。10時35分ころには前立腺が露出してきた。出血がほとんどない。この出血の少なさはRALPの大きな利点の1つ。「これまで、国内では東京医大のほか、九州大学、金沢大学を合わせて200件近いPALPが行われてきたが、輸血をした事例は1件もない」と同科主任教授の橘政昭氏は語る。出血がなければ感染症のリスクも低くなる。

 恥骨にカメラがぶつかって視野が確保できないなど、小さなトラブルはあったが、手術の進行には全く支障がない。11時30分に摘出し、12時17分には閉創。

 「だいたいこんな感じです。平均的な手術時間は3時間くらいです」。術後、教室のRALPを中心的な医師である吉岡氏は説明した。