がん医療均てん化推進の目玉として導入されたがん診療連携拠点病院の「新指針によるみなし期間」が3月31日をもって終了する。指定の必須条件となった放射線治療装置を購入した病院、一方で購入できず指定を辞退した病院も出るなど現場の対応は様々。それはあたかも日本のがん医療の縮図ともいえるものだった。がん診療連携拠点病院の整備を軸に展開されてきた日本のがん医療は次のステージに進むことになる。


写真1 第6回がん診療連携拠点病院の指定に関する検討会。4月1日以降の375病院の指定が決まった。

拠点病院指定に関する検討会を見る
 どこかで見たような光景だった。

 2月3日の東京都港区の三田共用会議所第一講堂――。この日は朝から、第6回がん診療連携拠点病院の指定に関する検討会が開催されていた。昨年10月に各都道府県が推薦してきた拠点病院候補について、この日指定を更新するか、新たに指定するか集中討議が行われた。この裁定に従って、4月から拠点病院となるか否かが決まる。

 検討会の構成委員と厚生労働省の関係者が“コ”の字状に置かれた座席に座り、一方に離れて拠点病院の推薦を説明する都道府県の担当者が陣取っていた(写真1)。都道府県の担当者は、独自に策定した地域のがん対策推進計画と病院を拠点病院に指定推薦する理由を、5分間で説明する。4分を経過した時点で事務局が予鈴を鳴らす。この説明を基に、(財)日本対がん協会会長の垣添忠生氏(国立がんセンター名誉総長)ら10人の委員が質問し、時に推薦を応援するコメントを述べ合う。この質問とコメントを受けて垣添氏が指定を更新するか新しく指定するか、それとも却下するか寸時に結論していく。昨年、民主党が行った国家事業の「事業仕分け」を思い起こさせる光景だった。

1つ医療圏2病院の指定は慎重であるべきだ
 この日2番目の説明となった福島県は、来年度のために新たに2病院を推薦していた。1つ目の厚生連白河厚生総合病院については、空白だった県南医療圏を充足するという理由で指定があっさり認められた。しかし、もう1つのいわき市立総合磐城共立病院については、いわき医療圏で2つ目となる拠点病院ということで、委員の山口建氏(静岡県立静岡がんセンター総長)が、異議を唱えた。

 「拠点病院は2次医療圏に1つが原則。地域の事情に合わせて2つ以上認める場合もあり得るが、そのときは1つ目以上に慎重に判断する必要がある。地域に2つ以上指定する場合には相乗効果があるかどうかを基準に考えるべき。福島県の説明では相乗効果が認められない」

写真2 検討会の会場に並べられた都道府県からの申請資料。

 磐城共立病院について福島県が厚労省に申請した資料によると、年間新入院がん患者数は3114人と県内では都道府県拠点病院の福島県立医大病院の4482人に次ぐ多さだ。

 同県が磐城共立病院を推薦した理由を(1)いわき医療圏に住むがん患者の受け入れ体制を強化、(2)相双圏の特に南部のがん患者の医療を一層カバーする、(3)茨城県のがん患者の通院圏である――と説明したものの、山口氏は「(いわき医療圏で指定されている)福島労災病院との相乗効果が明らかでない」と譲らず、結局「では、今回は見送りということで」(垣添氏)という結論になった。

 検討会の後、説明役であった福島県保健福祉部次長(健康衛生担当)の長澤脩一氏は「磐城共立病院はいわき医療圏の中核病院であり、3次救急なども行っている。いわき医療圏は広域な医療圏で、地域のがん対策計画も磐城共立病院を含めた合計9病院で策定しているので、新規指定が認められなかったのは残念。ただ、今回で2つ目の指定は厳しくなるという検討会の方針が理解できたので、次回は指定されるように準備したい」と語った。

 その後も、栃木県の足利赤十字病院、兵庫県の県立尼崎病院、市立伊丹病院、広島県のNHO福山医療センター、北海道の函館病院、徳島県の健康保険鳴門病院――など、自治体が推薦したにもかかわらず指定されない例が相次ぎ、休憩時間には会議室外のロビーに置かれたソファに座り込んで鳩首会議する各自治体の担当者らの姿が見られた。

がん診療連携拠点病院、私はこう見る(1)
「地域のニーズへの配慮が足りない」
国立がんセンター中央病院長土屋 了介 氏
 がん診療連携拠点病院の問題点は地域の特性がまるで反映しないシステムになっているところです。僕は、講演や視察など47都道府県のすべてを訪問しました。そうすることによって地域によって様々な医療ニーズがあることがわかりました。地域ごとにがん対策計画を作ることになっていますが、これは国が書いた基本計画を模倣したものにならざるを得ません。
 がん医療には手術、放射線、化学療法、緩和医療、患者からの相談に応じる業務が必要ですが、地域がん診療連携拠点病院はその1セットをそろえていなければならないことになっています。しかし、いろいろな手術を少しずつ行っていたのでは技量の維持ができません。放射線医療も集約化できるはずです。患者の身近にあると便利なのは、化学療法であり、緩和医療であり、相談です。ですから、手術と放射線は県庁所在地近辺にまとめ、そのほかの医療は地域で担当するというように機能を分けたほうが賢明です。
 1年に1回、拠点病院の院長を集めた会議が東京で開かれますが、8割の時間は厚労省の意向の説明に費やされます。同省の若い職員がパワーポイントを使っていろいろと説明するのですが、要するにトップダウンなのです。現場の要望や問題を話し合うボトムアップの会にすれば、参加した院長に得るところが大きいはずなのですが、実際は時代遅れのトップダウンなのです。拠点病院の指定要件は明確になりましたが、医療現場の本当の情報を吸い上げる仕組みは不在です。これではせっかくの制度が絵に描いた餅になってしまいかねません。 ( 談)