日本には研究のインフラが整備されていない
 2006年に膵がん患者の家族により設立されたPanCAN Japan(http://pancan.jp/)は、米国本部ならびに日本膵臓学会理事長の田中雅夫氏(九州大学医学部教授)の協力を得て、研究支援を主体に活動してきた。2009年からは、膵がん啓発を目的とした「パープルリボンキャンペーン」をスタート。パープルリボンとは「すい臓がん撲滅」を訴える世界共通のシンボルマークで、膵がんハイリスクの方々に膵がん検診を受けるよう訴えていく方針だ。

 しかし、膵がんの罹患率は10万人に6人と少ないため、ハイリスクグループの同定が重要となる。1つのハイリスクグループが家族性膵がん患者である。メーヨークリニックのグロリアピーターソン氏は、「膵がん検診が、費用対効果も含めてその人のためになるか否かは、家族歴が適用判断材料となっている」と語る。家族歴のある人の遺伝子研究は、膵がんの発症メカニズムの解明、より有効な検診方法の確立などに大きく貢献すると期待される。ピーターソン氏は、「より多くの家族歴のある人が参加することにより、奏効率の高い治療の開発が進む」と語る。

 わが国においては、日本膵臓学会が膵がん登録を運営していることもあり、米国の全国家族性膵がん登録(NFPTR)のような制度について、学会主導で設立準備をすすめることも可能だ。NFPTRの設立を急ぐと同時に、膵がん研究者の支援体制の構築も同時に進める必要がある。米国の研究所にて、膵がんの研究に取り組み、PanCANのYIA(若手研究者賞)を受賞するなど一定の成果をあげた日本人の研究者でも、ひとたび日本に戻ってくれば臨床医になるしか選択肢はなく、膵がんの研究を継続しながら生計をたてることは到底できない。何故ならば、厚生労働省にも、文部科学省にも、経済産業省にも膵がんに回せる研究予算がないからである。米NCIの膵がん研究予算は年間97millionドル(約97億円)であるが、わが国の膵がん関連の研究予算は1億円にも満たない。

 21世紀は「がんの世紀」と言われている。政府には、がん遺伝子研究で日本は世界をリードするという明確なビジョンをたてていただき、十分な研究予算を確保し、わが国の優秀な研究者を支援し、海外の研究者との国際共同研究などを通して、奏効する治療を開発し、膵がん患者を救済していただきたいと思う。

※:膵がんサミット会議の報告書は下記URLからダウンロードできる。
http://www.pancan.org/pdfs/Summit2007.pdf.

NPO法人 PanCAN Japan 理事 眞島 喜幸 氏
1948年東京生まれ。オタワ大学、カリフォルニア大学ロスアンゼルス校(UCLA)を卒業後、同大学の博士号課程に進み、Rand Corporationにて健康政策分析プロジェクトに参画。医療関係者を対象とするソフトウェア事業を進めたのち、教育系出版社の執行役員を就任。2006年4月、実妹を膵臓がんで失くしたことを機にNPO法人PanCAN Japanを設立した。現在は理事として、膵がん啓発活動および患者・家族支援を精力的に進めている。