難治がんの筆頭である膵がんの医療と研究を支援する組織である米国PanCANは年間8億円の活動予算を擁する巨大なNPO法人。米国国立がん研究所(NCI)や米国がん研究会議(AACR)と連携し、膵がん研究の方向にまで関与している、日本でいう患者団体とは全く異なる組織である。同組織の日本支部の事務局長を務める眞島氏は、日本の膵がんの治療成績を上げるため、次のような具体案を提言している。


 膵がんは、世界的にも難治がんの筆頭であり、ほかのがんが年々治療成績を上げていくなか、膵がんは5年生存率が5%未満にとどまっているのが現状である。1999年に米国の患者家族によって設立されたPancreaticCancer Action Network( 略称PanCAN )は、年間活動予算約8億円のNPO団体である。

 日本で「患者団体」というと、患者自身やその家族、もしくは遺族が手弁当で患者の闘病を支援するという姿が一般的だが、PanCANは財源を企業や政府、個人に求め、それを啓発や後述の研究支援へと還元するというスタイルをとっている。代表取締役ジュリー・フレッシュマン氏は弁護士と経営学修士号の資格を持つビジネスウーマン、創設理事長であるシンシア・ストロム氏は地元シアトルでスターバックスの創業を支援した資産家であり、この2人が組織をパワフルに牽引している。

 本部が特に重視しているのが、膵がん撲滅のための研究支援である。2008年度のNCI予算は約5Billionドル(約5000億円)であったが、膵がんの原因解明、根治療法開発を目指す研究者への助成は僅か87millionドル(約87億円)と極めて限定的である。それでもNCIの膵がん研究予算は、1999年17millionドル(約17億円)から2008年87millionドル(約87億円)と増額された。

 PanCANは「膵がん撲滅の研究資金を確保するために、米国政府から公的資金援助を、また民間からは寄付金を募る大規模なイニシアチブを開始する」と発表。膵がん研究促進のための国家計画を実現するために、PanCANでは特定がん対策予算では先例のない170millionドル(約170億円)という額を要求し、さらに「民間資金を中心に25millionドル(約25億円)、総額195億円を3年間で調達する」という目標をたてた。この公的資金と民間資金の融合により、PanCANが提案する「有効な治療法を最短で開発する」ための行動計画を支援できるとしている。PanCANの大きな特徴は、研究者に資金面で積極的に支援し、研究の活性化を経て、膵がん攻略につなげようという活動方針にある。毎年公募に寄せられる研究プロジェクトの提案書は、米国がん研究会議(AACR)の専門家により評価選定される。PanCANでは過去に若手研究者奨励金(YIA)、キャリア開発奨励金(CDA)、特別研究員奨励金(Fellowship)、試験研究助成金(Pilot Grant)など多数の奨励金を授与してきた。2003年に発足してから38人の研究者に対して3.7millionドル(約3.7億円)の助成金を交付した実績がある。2008年には、1.045millionドル(約1億円)が11人の研究者に与えられた。

膵がんサミットの開催
 「膵臓がんの生存率の改善のための最適な治療法を見出すために、どのように膵がん研究を進めるべきか」は大きな課題である。PanCANではこの課題に取り組むために、2007年8月に「膵がんサミット」(Advancing theState of Science in Pancreatic Cancer)を開催し、全米・欧州の代表的ながん研究者を招聘した。サミットの結果は、白書としてまとめられ、膵がん制圧に向けた研究課題と必要とされる予算額が国立衛生研究所(NIH)ScienceReviewに提出された※。

 PanCANは前AACR会長のGeoffrey Wahl氏を科学諮問委員として招聘することにより、AACRとの関係強化に努めてきたが、今後膵がん研究コミュニティのファシリテータ役として活動することにより、患者に恩恵を与えるトランスレーショナルリサーチの促進を目指している。膵がんサミットは定期的に開催される予定ではあるが、膵がん研究コミュニティをまとめるためには、乳がん研究コミュニティの一大国際イベントに成長したサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)のような年次シンポジウムが必要であるという声もある。