VII 化学療法中止の判断を適切に行うために
 経過中、副作用、PSの悪化した時にも患者のメリットとデメリットを考えて治療中止を考慮しなければならない。また、患者の側から「治療を止めたい」という訴えのでることもあるだろう。

 治療中止は、人生の大きな転換点であるため、医療判断には適切な根拠が必要である。

 しかし、先に述べたように治療経過中にうつ病を発症し、意欲の低下から治療中止ということも生じる。このように患者の判断能力に問題がある場合には、正しいインフォームド・コンセント(IC)とは言えない。なぜなら、ICが成立するための患者側の要因として表4に示すように4つの要因が必要だからである。

 患者の判断能力が適切であると判断されるためには上記に問題がないことを確認する必要がある。

 うつ病があると、(3)、(4)などが問題となる可能性がある。

VIII いかにしてうつ病を見出すのか?
 がん医療現場におけるうつ病は、その頻度が少ないわけではないが、見落としが多い。しかし、精神療法、薬物療法などにより症状の改善が期待できる。したがって、スクリーニングが有効である。しかし、従来のうつ病診断スクリーニングツールでは、体力の低下したがん患者におこなうことが難しく、簡便な方法の開発が待たれていた。

 わが国では国立がんセンターを中心としたグループが、感度が良くて簡便なスクリーニングツールを開発した(図2)。この方法は、患者が2つの質問に答えるだけで、感度80%でうつ病または適応障害をスクリーニングできる。

 大切なことは、うつ病では?と気づくことがスクリーニングへの第一歩である。治療中の患者で不眠、食欲低下が出現した場合、検査所見に比較してPSの悪い場合、所見に合わない身体症状、疼痛などが認められた場合には、うつ病ではないかと考えるようにしたい。

IX がん患者のうつ病治療のポイント
 がん患者では、担がん状態、高齢、手術、放射線、化学療法などのためにさまざまな身体症状を有していることが多い。したがって、薬物療法を行うときには副作用に注意が必要である。さらにがん医療は集学的治療であるため、さまざまな薬物投与を受けていることが多い。したがって、薬物の相互作用に注意する必要がある。

 うつ病の治療に関しては、アルゴリズムができており(図3)、これを参考にしながら薬剤投与の選択を行うのがよいだろう。