地域診療所の看護師がFOLFOXを見学
 今年4月にはそれまでの化学療法部を拡充、10床の外来化学療法センターとしてオープンさせた。現場を仕切るのは、癌研の研修に参加した新村氏だ。「外来で化学療法を受ける患者は毎日、平均4〜5人。多い日は8人を数える」(新村氏)。

 最近、同チームが注意しているのが、化学療法の外来化と並行して進む抗がん剤の経口化の進展だ。注射薬が経口抗がん剤に置き換わる例が相次いでいる。通院しなくても投薬できる薬剤の増加は患者や家族にとって福音だ。しかし病室や診察室で説明しても、帰宅した患者が用法用量を遵守できる保障はない。そこで、同チームでは経口薬による治療の開始にあたっては患者を1週間ほど入院させる方式を採用している。

 入院期間中、医師や看護師の目の前で、実際に薬剤を服薬してもらう。すると、用量を誤る、もしくは他の薬剤と誤用する患者がいるという。看護師長の松枝氏は「正しく服薬してもらうためには、家族の理解と協力が欠かせないが、信頼できる家族は誰かという見極めもこの入院期間中に行う」と語った。

 がん薬物療法の専門医はいないにもかかわらず、同センターは鹿児島県内で最もがん化学療法について信頼されている医療機関の1つだ。近くの診療所ががん化学療法を開始することになった。その診療所の看護師が見学に訪れ、FOLFOXを学んでいくこともある。

 また、同センターには婦人科や血液の専門家はいない。しかし、婦人科腫瘍や血液がんの外来化学療法を引き受ける。県内最大の医療機関である鹿児島大学医学部付属病院からも化学療法の依頼を受け、患者が送られてくることもある。これもCancer Boardの協議に負うところが大きい。

Cancer Boardの設計はがん医療個性を反映
 朝の7:30。診療開始の1時間前、会議室に医師や看護師、薬剤師が集まってきた。この日はCancerBoardが開かれる日。この日に用意された議題は、(1)化学療法の導入症例、治療変更症例、(2)新規レジメンXELOX(カペシタビン/オキサリプラチン)とXELOX+ベバシズマブの登録、(3)stage径臘欧んの化学療法とFOLFOXの位置づけ、(4)制吐剤ラモセトロン投与の注意点。

 進行大腸がん(stageIII)の化学療法では、1次化学療法はXELOX(+ベバシズマブ)かmFOLFOX(+ベバシズマブ)とし、2次はFOLFIRI(+ベバシズマブ)、3次はセツキシマブ(+CPT-11)とし、それがPD(進行)となった場合はTS-1単独とすることなどが決まった。

 制吐剤ラモセトロンについては、予防投与が添付文書では5日が明記されているにもかかわらず、保険審査では2日分しか認められない鹿児島県の特殊事情についての意見交換が行われた。報告は淡々となされたが、参加したスタッフからは発言が相次いだ。院外の不条理に対する違和感の共有が、院内の一体感を強固にすることもあるようだ。

 いま、全国のがん医療の現場では、来春に予定されているがん診療連携拠点病院の指定更新に関心が集まっている。この指定要件の1つに加わったこともあり、CancerBoardの設置に注目されている。「厚生労働省が認めるCancer Boardの要件とはどんなものか。何をクリアすればいいのか」。担当者が情報収集に奔走している。しかし、各医療機関の地域の事情によって求められる医療にも違いがあり、おのずと「望まれるCancer Boardとは何か」という設問に対して用意される答にも様々なものがあってもおかしくないのではないか。

 難度が高いがんを集中的に診療する大学病院のCancer Boardの主議題に原発不明がんの比重が高くなることも頷ける。一方で、霧島市立医師会医療センターのような医療機関では、専門家がいないがん種を含めた多様ながんに対して、限られた戦力でミスなく治療していくにはどうしたらよいかが主な議題になるのも当然といえるだろう。言い換えると医療機関の個性に合わせたCancer Boardが存在し得るということだ。「どのようなCancerBoardを設置すべきか」は「どのようながん医療を目指すか」に重なる問いかけといえそうだ。

院長の藤崎 邦夫 氏
「病院機能評価機構Ver 6 の認定を得ることができました」

 霧島市立医師会医療センターは、地域医療に果す役割は非常に大きなものがあると自負しています。がん医療の分野では、消化器病センターと外来化学療法センターを設けています。消化器病センターでは、すべての分野で日本標準のレベルを目指して診療・研鑽に励んでいます。特に当院は、鹿児島県内有数の肝疾患治療専門施設で、インターフェロン治療を受ける患者数は年間100人近くに迫り、肝細胞がんの基本的な治療もできる陣容を整えています。がん化学療法では癌研有明病院でトレーニングを積んだスタッフを中心に、進めています。化学療法を受ける患者は今後、増加傾向にありますが、チーム医療を重視して、予後の改善に努めていきたいと考えています。今年は病院機能評価機構の再受審を終え、難しいとされるVer 6の認定を得ることができました。