古川 先生は米国に拠点を置く膵臓がん支援組織PanCANの科学諮問委員長に就任されるとうかがいましたがPanCANとはどのような組織でしょうか。

Tuveson 私の委員長としての仕事は来年からになると思います。PanCANは膵臓がん患者支援団体であり、膵臓がん患者家族により設立されました。以前は膵臓がんはほとんど医療上、無視されるような状態でした。なぜなら、患者はほとんど治らないからです。PanCANはこの状態を変えることを目指したのです。ほとんど草の根運動からはじめて資金を集め、研究者に対し研究助成金を提供するようになったのです。私はPanCANの研究助成金供与を受けたはじめての研究者だったのです。研究をスタートする時でこの資金は非常に有用でした。米国では現在、膵臓がん患者の3人に1人がPanCANに関与しています。そのような患者あるいはその家族がPanCANによってもたらされる情報をもとに医師やコメディカルと話をし、よりよい診療を受けるようになっています。患者にとって非常に恩恵があるのです。

 また、PanCANメンバーはワシントンに行って積極的にロビー活動をすることによって政府が膵臓がんに対しもっと研究資金を出すように運動しています。実際、そのような運動によって、膵臓がんのような予後の悪いがんに対策をとるようにする法案がもう少しでできるところなのです。

日本でもモデル・マウスを利用できる
古川 先生のマウスモデルは膵臓がんを研究する上で大変有用なものですが日本の研究者も利用することはできますか。

Tuveson もちろんですとも。このマウスを使用する上で何の制約もありません。研究の目的は、世界の研究者の関心に応じて様々なものがありますが、いずれのテーマにも利用してほしいと思っています。世界中の研究者に使ってもらうには、生産性の問題などが残っていますが、古川先生の質問に対する答は、実験材料のやり取りに際して一般的なMTA(material transferagreement)を結んでもらえれば、だれでも使うことができます。それがたとえ商業利用目的であっても可能です。

古川 最後に日本の若い医師にメッセージをお願いします。

Tuveson まだ専門領域の選択で迷っているのであれば、膵臓がんほどあなたの献身にふさわしい領域はありません。ほかのどのがんよりも患者が必要としているのが膵臓がん研究の進展だからです。もしあなたが変革を望んでいないのであれば、膵臓がん研究を選ぶべきではないでしょう。でも、医師として治療が困難な患者を救う最も大きな変化が期待できる領域に身をおきたいと考えるならば、この膵臓がんこそまさしくその対象であるということができるでしょう。