古川 そこが大腸がんや肺がんと膵臓がんの際立った違いですね。

Tuveson まさにその通りです。そこで私たちは、ヘッジホッグ信号阻害剤(hedgehog signaling inhibitor)が間質を退縮させ、血管を増加させることを発見しました。それによりがん組織にゲムシタビンや他の薬剤を効果的に行きわたらせることができると考えられました。実際に、この阻害剤とゲムシタビンを併用投与すると、私たちのマウスモデルは非常によく反応し、膵臓がんが退縮して数週間も延命しました。初めに申し上げたように治癒したマウスはいませんでしたが、この方法により私たちは膵臓がん治療の新しい扉を開くことができたと思っています。

古川 まさしくその通りです。

Tuveson ゲムシタビンの腫瘍到達量を高めるためにさらに多くの方法を検討していく必要があるでしょう。

古川 ヘッジホッグ遺伝子はがん細胞の中では機能していませんが、間質細胞では機能しています。膵臓がんの治療にヘッジホッグ信号阻害剤を使用するというのは、まさに画期的な着想です。この阻害剤の臨床応用はいかがでしょうか。

Tuveson 私たちが使用したヘッジホッグ信号阻害剤は「IPI-926」という化合物です(図2)。米国マサチューセッツ州CambrdigeにあるInfinity Pharmaceuticals社が合成しました。現在、米国内で患者に投与して安全性を検討する臨床試験が行われています。この試験の後、ゲムシタビンと併用してゲムシタビン単独治療に比べて生存期間を改善する効果があるかどうかが検討されることになります。