三重大学医学部准教授の三木氏は大腸がん患者の30%に炎症が見られると報告

薬物代謝にも影響し、化学療法の効果を減弱
 がん患者の体内でIL6がいかにやっかいな存在か。最近、この事実を証明するデータが相次いで発表されている。がん患者のQOLを下げるほとんどの症状で、IL6が裏で糸を引いているといってもいいようだ。最近ではIL6が肝臓の薬物代謝酵素(CYP3A4、CYP2D6など)の活性を抑制する結果、薬剤が体内に長期間とどまるということも明らかになってきた。つまり、「抗がん剤やオピオイド鎮痛薬の有害事象が発現しやすくなる」(向山氏)ということだ。

 三重大学大学院医学研究科消化管・小児外科准教授・病院教授の三木誓雄氏は、炎症マーカーであるCRPが高い患者(後述)では、塩酸イリノテカン(CPT-11)の代謝活性体SN38の標的酵素であるTOP1のmRNAの産生量が低く抑えられる傾向にあることを見出した。「CRP値が高い患者ではCPT-11による治療効果が十分に現れない可能性がある」と三木氏は指摘する。

炎症と栄養マーカーで患者を4分類
 三木氏の研究を詳しく見てみよう。

 炎症とがんとの関係を長年にわたって研究してきた同氏は、がんの組織がIL6とともにIL6受容体をも高発現していることに注目してきた。その結果、IL6が中心となってがん悪液質が発生、しかもがん組織自ら産生したIL6を自ら受容して増殖する患者にとっては大変迷惑な循環現象が起こっていると捉えるようになった。しかもこうした現象を血中CRP値が鋭敏に反映していることにも注目してきた。

 栄養状態が悪くて痩せているならば、強制的に栄養を投与すれば、症状は改善するはずだ。実際、米国では1950年代に進行膵臓がんを対象に高カロリー輸液(3000kcal/日)を投与する臨床試験が実施されたことがある。しかし、この試みは失敗に終わった。体重増加は3割に見られただけで、残りは良くて現状維持、ともすれば減少するというものだった。栄養が与えられても、それを体に取り入れることができない。「食べても、食べても痩せる」という悪液質の特徴の背景には炎症があると三木氏はいう。

 同氏の分類は、炎症マーカーのCRP(C反応たんぱく質)と栄養マーカーのアルブミンの増減を目安に図3のように、がん患者を4種類に分けるというもの。増えているか減っているかの目安となるカットオフ値はCRPを0.5mg/dL、アルブミンを3.5g/dLとした。

 CRPは0.3mg/dL以下が成人の正常値とされている。1.0mg/dL未満を軽度の上昇、1.0mg/dLを中等度の異常とする。重症細菌感染症や関節リウマチの活動期には10mg/dLを超えるようになる。

 「侵襲性の高い開腹手術の後などでは20〜30mg/dLに達することもあるため、多くの外科医はCRPが0.5mg/dLというととりたてて高いという印象を持たない。しかし、術後1週間以内に正常値に戻るのではなく、がんに由来するCRP値上昇はがんが発見される何年も前から続くことになり、結果的に大きなダメージを患者の身体に与えている」