友滝 愛 氏 Ai Tomotaki  R.N. P.H.N. M.S.(保健学修士)
年齢 : 28歳(2009年5月現在)
現在の職業 : データマネージャー
現在の勤務先 : NPO法人日本臨床研究支援ユニット
出身大学・学部・卒業年度 : 東京大学大学院医学系研究科修士課程・2008年度卒 臨床専門分野 : 看護(小児外科・小児HCU)
+αの道に入る前の臨床経験年数 : 2年
+αの道に入った後の臨床経験年数 : 年に数回(子どもキャンプの同行ナース)
+αの道に入った際の年齢 : 25歳
+αの道の種類 : 臨床疫学研究・データ管理学(Clinical Data Management)
何故+αを選んだのか

 ナース時代に、「良いケアをしていても、その情報が広く伝わらないと、他の患者さんにまでそのケアは届かない」と実感しました。元々研究に興味はありましたが、実際に臨床現場で働いたことで「良いケア情報を広める手段としての研究を自分の仕事にしたい」と思い始めました。また、いくら研究しても適切な方法でなければ適切な結果は得られないと思い、修士課程で疫学・生物統計学を専攻しました。

どのようにして+αの道に入ったのか

 地元広島の短大看護学科卒業後、大学へ編入。大学院を受験し合格しましたが、一度は現場で働きたくて入学と同時に休学し、小児外科・HCU病棟で2年勤務ののち復学しました。修士卒業後の進路は非常に迷いましたが、博士課程に進学して研究できるだけのテーマを見つけることができませんでした。それよりも、「できるだけ臨床研究をメインの仕事にしたい、研究の実務経験を積みたい」と思っていたところ、研究室の先生から臨床研究を支援するNPOを紹介してもらったことが、現在の仕事に至った経緯です。

 また、「疫学・保健統計を勉強中です!看護研究支援に関わりたいです!」と公言していることがきっかけで、現在は本の執筆編集、臨床ナースの研究アドバイザー、看護大情報処理演習のアシスタントもやっています。

+αの道はどうであったか、何を学んだか

■修士課程〜疫学・生物統計学
 人の健康問題を取り扱う研究のデザイン(コホート研究、ケース・コントロール研究、ランダム化比較試験)や基礎・応用統計学に基づく解析方法(確率論、検定、推定、重回帰分析・混合効果モデル、多変量解析、サンプルサイズ設計等)の原理原則を一通り学びました。テーマも多岐にわたり、治験や大規模疫学研究のデザイン以外にも、医療経済評価やQOL評価、薬剤疫学、栄養疫学の授業もありました。応用統計の壁は高く挫折の毎日でしたが、先生や先輩・同期に助けてもらったおかげで、解析結果をそのまま鵜呑みにするのではなく、データがもつ統計的な意味と臨床的な意義のバランスをとることの大切さ、バイアスの考え方について、理解を深めることができました。

■臨床研究支援業務〜データマネジメント
 研究の計画〜論文公表までには多くの人が関わりますが、この中で「研究データの品質管理」を担うのがデータマネジメントです。研究の現場では、必ずしも研究者が思うようにデータが集まるとは限りません。対象者が同意撤回することもあれば、そのときに、たまたま調査に協力できないこともあります。また、調査票の記入ミスや情報の収集漏れ、データベースのシステムトラブルやデータの入力ミス、データの改ざん、人によるデータの解釈の不一致…さまざまなトラブルが起こりうる可能性があります。このときに、研究結果へ影響する(バイアスとなる)ことを最小限にとどめるために、「研究目的は何か?」「計画されている解析方法は?」という原点から逆算してデータのフォローアップを行い、可能な限り研究計画段階からトラブルが起こらない仕組みを考えるのが「データマネージメント」です。また、データは人を介して収集されるため、研究に関わる人たちのチームワークやコミュニケーションは必須です。

現職に+αはどう生きているか、または現職が+αそのものの場合は、臨床経験が現在どう生きているか

 ナース時代のPOMR(Problem Oriented Medical Record型・SOAP(Subjective data, Objective data, Assessment, Plan)式の看護記録、スタッフが交替してもケアの質に差がでないための工夫、ミスが起きそう/起きたときにその影響を最小限とするためのチームでの取り組みは、まさにPDCA(Plan, Do, Check, Act)cycleや品質管理の概念と共通しています。この感覚は、研究データの品質管理でも非常に役立っています。

 そして、今の患者さん・ご家族の苦しみが、将来の患者さん・ご家族の同じような経験につながらないように、その思いが研究の意義として今に生かされています。

今後どのようにキャリアを形成していくか

 臨床研究のデータマネジメントを1つの柱として、実務と教育の両方に関わりたいので、まずは10年後を目標に、博士号取得も視野に入れて研究の実務経験を積みたいです。また、臨床研究の質向上のためには治験の知識も必須だと思いますので、治験に関しても積極的に勉強する予定です。

 私自身がスキルアップすることで臨床研究の質向上に貢献できたら、その研究成果が現場への還元につながったら幸せだなぁ…そんな願いを込めて今後のキャリアも考えていきたいです。

著書など
・(共著)看護師・看護学生のためのなぜどうして 8小児看護 第2版. メディックメディア, 2007
・友滝愛. 看護研究とEvidence ―エビデンスを理解するために, 看護部マネジメント 12: 253; 8-12, 2007
ご自身が紹介されたマスコミ媒体など
ノトコード発行. 看護学生のためのラフスタイルマガジン ナースのたまご「先輩の針路」, vol.1, 2008