内田 毅彦氏 Takahiro Uchida,MD,PhD,MSc
年齢 : 39歳(2008年5月現在)
現在の職業 : Director Clinical Research/Medical Director International, Interventional Cardiology, Clinical Sciences
現在の勤務先 : Boston Scientific Corporation
出身大学・学部・卒業年度 : 福島県立医科大学 医学部 平成6年卒
臨床専門分野 : 循環器内科
+αの道に入る前の臨床経験年数 : 8年
+αの道に入った後の(留学後の)臨床経験年数 : 0年
+αの道に入った際の年齢 : 31歳
+αの道の種類 : 臨床試験 薬事行政 医療機器開発
何故+αを選んだのか

 日常臨床を通して違和感があったのが、患者さんへの治療のインフォームドコンセントの際に、どうしても、海外のガイドラインを使用せざるを得ないことでした。当時はEBMといいながら、なかなか日本では良い臨床研究がないという状況でした。日本独自のエビデンスを構築するためにはどうすれば良いか。悩んだ挙句、留学して臨床研究の方法論を学ぼうということになりました。

どのようにして+αの道に入ったのか

 恩師で留学先の先輩でもある上塚芳郎教授(東京女子医科大学循環器内科・病院管理学)から米国には公衆衛生大学院があって、そこで臨床試験の方法論も学べると聞きました。他にも少し情報を集めて、上塚先生ご自身もご卒業されたHarvard School of Public Healthを私も目指すこととしました。もともと英語が得意だったわけではありませんので、英語の勉強から始めました。とはいえ、日常臨床も結構忙しかったので、TOEFLの結果はなかなか向上しませんでした。臨床が一区切りするある年に入れなければ、レベルを落として入りやすいUniversity of Hawaiiに行こうと具体的な目標を立てて集中して勉強するようにしました。前年の夏休みには実際に学校を見に行って、在校生から情報を集めました。GREは当時は語彙、算数、分析問題でしたが、語彙は所詮ネイティブには勝てませんので、完全に諦めて、算数で満点を取り、分析問題である程度点が取れたら止めようと、短期集中であまり時間をかけませんでした。実際、語彙は全て同じ答えをクリックして、全く問題も読みませんでした。

+αの道はどうであったか、何を学んだか

 公衆衛生大学院ではMaster of Public Healthが有名ですが、私は臨床研究の方法論に特化しようと考え、Master of Science in Epidemiologyを専攻しました。当然、生物統計学と臨床疫学のコースを集中的に取り、とにかく実際に自分が臨床研究を実施できるスキルを身に付けることに着眼点を置きました。およそ9ヶ月の短い修士課程ですが、基本的なことは身についたと思います。ただ、もともとある程度の基礎がある方でもない限り、もう少し奥に入らないと、実際に自分が臨床試験を企画したり、結果を解析したりという所までには行きにくいかもしれないと私は感じました。逆に、9ヶ月臨床を離れて、中途半端で終わらないかと考える方もいらっしゃるかと思いますが、何を目的とするかによっては、とても有用だと思います。つまり、論文のレビューがより的確にできるようになりますし、研究についてのアイデアが画けるようになります。それまでは、漠然とリサーチクエスションが浮かんでも、それをどう形にするかが全くわかりませんでしたが、それがある程度わかるようになります。複雑なデザインになっても、統計家の先生とチームを組むことで臨床研究を主導できるようになると思います。

卒後の道・現職に+αはどう生きているか

  HSPH卒業後は、入学時のコネクションを利用してHarvard Clinical Research Institute (HCRI) / Brigham and Women’s Hospital で1年間フェローをすることができました。HCRIは循環器医療機器の治験では世界的に有名なacademic research organizationで上司のRichard E. Kuntz指導の元、治験のプロトコール策定の仕事に従事し、かなり特異的なスキルを身につけることができました。この仕事を通じて、臨床開発に多いに魅力を感じることとなりまた、重要な仕事であることを認識致しました。フェローの後、幸いにもUS Food and Drug Administration に就職することが内定しました。
 就職のプロセスの間に日本に一時帰国し、医薬品医療機器総合機構(PMDA)で短期研修をさせてもらいました。ここで、日本の医療機器薬事行政について多くを学ばせて頂きました。
 その後、厚生労働省科学研究費補助金事業である治験推進研究事業に参画することになり、日本医師会治験促進センターを起ち上げ、医師主導治験を支援する機会を得ました。この時に、日本の治験事情にある程度精通することができました。
 FDAには2年いましたが、循環器医療機器審査部で審査官として勤務し、米国の医療機器薬事行政について学びました。審査には医学的知識と、臨床試験を吟味する能力が要求されます。HSPHで学んだことはとても役に立ちました。
 FDAでは出来上がったものを審査する立場でしたが、実際に開発する立場で自分の経験を活かせないかと考え、現在は医療機器メーカーのBoston Scientific社にお世話になっております。米国本社の研究開発本部にて、新しい医療機器のグローバル臨床試験のデザインや臨床研究の企画、対FDA、PMDAの承認取得のストラテジーに関してアドバイスをしたりしています。医学、研究開発、薬事に加え、今度はビジネスの側面も学べる貴重な経験をさせて頂いております。

今後どのようにキャリアを形成していくか

 +αで学んだことを生かして、医療機器開発、臨床試験等の分野に進めたら良いと思っています。

自身が紹介されたマスコミ媒体など
Medical Tribune (FDAの経験をシリーズで1年掲載 2006年)