肺塞栓患者死亡でマスコミ対応に追われる
 4月18日月曜日、19日火曜日は、救急患者対応のため、一般外来を休診。増加する外来患者に対して各科から医師1人を救急外来へ供出し、さらに研修医全員も救急対応とした。

 4月18日の午前7時過ぎには、車中泊をしていて車から降りた際に倒れたという女性が心配停止の状態で救急搬送されてきた。肺塞栓を起こしており、同日亡くなられた。熊本市消防局がこの事例を公表すると、今回の地震で「エコノミー症候群」による死者が明らかになったのは初めてだとして、マスコミが大きく報道し、事務部門が取材対応に追われることになった。

 4月20日水曜日から通常の診察を開始し、翌4月21日木曜日には、救急患者が減少してきたので、災害対策本部機能を縮小し、救急患者診療エリアを平時の通り救急外来のみに戻した。最終的に、発災より1週間で約1000名の傷病者を受入れ、そのうち200名が入院されたことになる。

 今回の震災で、県災害対策本部に要請した非常食と飲料水は比較的早く手に入った。余震がひっきりなしに続く中、職員は「また大きな揺れがあったら、病院の食料が底を突くのではないか」と不安になっていたので、これは非常に助かった。さらに、国立病院機構やSPD(物品管理)を担う外部委託業者からは、当院職員に対する食料や水の援助もあり、とてもありがたかった。職員自身が被災者で、中には家屋が全壊や半壊してしまった者もいる。この援助で職員がどれだけ元気づけられたか、感謝に耐えない。

 なお、避難所生活などを余儀なくされる職員向けには、早くから当院の講演会などに使う大きなホールなどを開放していて、希望に応じてそこで寝泊りしてもらっている。

避難所生活をする職員向けにベッドと飲料水を用意した。(撮影は4月28日)

事務部門の支援に早期からのボランティア導入も
 国立病院機構を通じて人的支援の面も手厚く、もちろんそれも大いに役立った。時間の経過とともに、職員は疲労がたまるので、交替要員がいることで肉体的・精神的にも楽になれる。

 ただし、人的支援に関しては、事務部門へのサポートがもっとあってもいいのではないかという点が一つの課題として浮かび上がった。人的支援というとどうしても医療職にばかり目が向きがちだが、様々な調整業務に追われる事務職も、かなり忙しい。当院の事務部門からは、「駐車場の整理誘導や物資の搬入輸送はボランティアでもいてくれたら助かった」との声が挙がっており、県との調整などを通じて、病院で早くからボランティアを受け入れることも今後は考えていきたい。

 また、当院は電子カルテを導入していて、今回はその稼動にほぼ問題がなかったからよかったが、稼動しなくなることも想定して、急遽紙カルテ使用をする際の教育も積んでおく必要がある。

 今回の熊本地震の大きな特徴として、過去に例がないほど余震が続いていることが挙げられる。いつまで続くのか予想もできない状態だ。そうである以上、二度あることは三度あるかもしれない。それゆえ、当院では、三度目の震度7の地震に備えての対策を指示。まず、患者の食料だけでなく、職員の食料も備蓄するようにした。さらに、職員全員に対して、三度目の地震に対する心構えを持つよう伝えるとともに、災害対策のマニュアルの訂正も行いつつある。備えあれば憂いなしではないが、初回、二回目の地震に対しての反省に立ち、とにかくいろんなことを準備しておくつもりだ。

 これから今回の震災対応への長期戦が強いられる。地震発生から1週間の、災害サイクルにおける「急性期」の時期を過ぎ、今は発生から3週間までの「亜急性期」。そして、まもなく「慢性期」へと入る。この先は、消化管出血(ストレス性潰瘍)、慢性疾患および生活習慣病などの増悪、さらに続くとストレスから来る精神疾患が増えてくることが予想される。われわれ熊本医療センターの職員は、地域医療機関と協力し合いながら、こうした疾患へのバックアップ体制をしっかり敷いておくことが欠かせない。そのためには職員に過度な肉体的・精神的負荷がかからないよう、院長として留意したい。