地域医療を担う医師をサポート
病院間で人事を調整する仕組みも

東北大学総合地域医療教育支援部教授の石井正氏

 地域枠出身医師のキャリア支援について、先進的な取り組みを始めているのが東北大学だ。

 地域枠の学生に限らず、全ての学生に東日本大震災の被災地見学などの地域医療学習を行っている。「東北大は長きにわたり、医師が少ない東北地方の医療を支え続けてきた。こうした背景から、全ての教員に地域医療を担う重要性を伝えようとする文化が根付いている」。東北大総合地域医療教育支援部教授の石井正氏は、東北大の教育方針をこう説明する。

 そして今、東北大が注力するのは、卒後のキャリア支援だ。「地域医療を担う医師を確保するには、地域で診療に携わりつつもキャリアを積める環境作りが欠かせない」と石井氏。その取り組みの一例が、「医療連携ネットワーク」の構築だ。東北大は地域の拠点病院を中心に、奨学金受給者や自治医科大学卒業生などが専門医の資格を取れる拠点病院に一定期間勤務するよう、人事調整を行える仕組みを作っている。そのため、「ある程度、医師の家庭事情やスキルアップに配慮できる体制が整っている」と石井氏は話す(図A)。

図A 地域の医療機関と大学を情報通信技術(ICT)で結び研修医をサポート

 さらに、総合診療医を目指す後期研修医や実際に勤務している総合診療医には、「受講生」として登録すれば、東北大の内科、外科、小児科などの専任教員の授業や医学統計学などの講義を大学や拠点病院で聞けたり、勤務先でインターネット録画講義を視聴できるようにする「コンダクター型総合診療医」養成プログラムを、文科省の「未来医療研究人材養成拠点形成事業」として実施している。「受講生になれば、地域医療に従事しながら最新の治療技術や情報を学べ、さらには臨床研究もできる。地域医療を担う医師のキャリアへの心配をなくすための仕組みだ」と石井氏。

 これらの取り組みに加えて現在、卒後の経験症例数を医師ごとに検索できるシステムを作り、専門医取得に必要な症例数に満たない卒業生をサポートする取り組みを始める準備を進めているところだ。

 「地域医療の担い手を育てるには、地域全体が連携し、大学、拠点病院、医師がそれぞれ少しずつ地域医療をサポートしようとする意識を持つことが重要になる」と石井氏は話している。