地域枠出身の医師が本格的に増えてくるのはこれからだが、「地域枠の運用が自治体に任されていることもあり、制度のひずみが今後、顕在化する可能性がある」と指摘するのは奈義ファミリークリニック(岡山県奈義町)の賀來敦氏だ。賀來氏が指摘する地域枠の課題は2つ。1つは、奨学金制度が医師のライフイベントを考慮していない点。もう1つは、専門医の取得が保証されていないことだ。

 地域枠と連動した奨学金を自治体から借り入れた場合、義務年限が明けないうちに指定の医療機関での勤務を中断すると、自治体が定めた規定に基づき奨学金を返還しなければならない。結婚や出産といったライフイベントにより、いったん現場を離れる場合も同様の扱いを受ける。

 だが、地域枠と連動する奨学金は地域枠出身者を地域にとどめる策として設けられているため、返還を防ぐ目的であえて利率を高くしている。そのため、返還が困難な例が出てくる可能性がある。

 賀來氏の発言を裏付けるのが、2013年度に地域枠関連の奨学金制度を実施した42の自治体に対する調査結果だ。奨学金と関連する地域枠を設ける53大学59枠の貸与総額の最頻値は1440万円(月額20万円×72カ月)、全体の7割(69.0%)が10%の金利を設定していた。加えて、返還時に1年以内の一括返済を求める制度が7割強(74.1%)を占めていた。「地域枠の中にはある程度自治体の医療機関に勤務しても、返済額が全く減らない制度がある」と賀來氏は言う。

 金利を見ても、日本学生支援機構第二種奨学金の年利1.3%程度、日本政策金融公庫一般教育貸付の年利2.15%と比べると相当に高い。「奨学金を借りている期間が延びるほど返済額が増えるリスクがあると分かれば、入学後に奨学金の借り入れを拒否する学生や、すぐに返還する学生が増え、制度が空洞化してしまう可能性がある」と賀來氏は危惧する。

 地域医療に貢献しようと前向きに取り組む医師が、必要以上に不利益を被らないよう、「勤務期間に応じた返済額の減免や、返還の理由に応じて柔軟に対応することを保証する文言を奨学金貸与時に示すべき」と賀來氏は指摘する。幡多けんみん病院(高知県宿毛市)で初期臨床研修を行う冨士田崇子氏も、「一定期間の国内外への留学の許容や、女性医師が働きやすい仕組み作りは、将来地域に残る医師を増やすきっかけになるのではないか」と話している。