先駆者の閉院話をいち早く入手
 開業を志すも、脊椎の手術を専門とする診療所を開業するとなると、設備をそろえるだけでも膨大な初期費用が必要だ。手術が必要な脊椎疾患を抱える患者の絶対数は限られるため、開業するなら、地方からの患者も集めやすい東京都心近くであるべきと清水は考えていた。しかし、開業したい地域では有床診療所の認可が得にくく、理想とする開業を実現する機会はなかなか巡ってこなかった。

 そんな清水の元に、2012年4月末、あるニュースが飛び込んだ。

 脊椎低侵襲手術の大家で、先駆的に脊椎クリニックを開き、数多くの治療を行っていた西島雄一郎氏が体調の都合で自院の西島脊椎クリニックを閉院するという噂だった。当時、外来予約は数年先まで埋まっているといわれるほど、患者の人気と信頼を得ていた西島氏。清水にとって西島氏は、「尊敬してやまない脊椎手術のパイオニア」だ。学会活動などで西島氏の存在はよく知っていたが、挨拶しか交わしたことはなかった。それでも、清水は噂を聞いた直後に西島氏を訪問し、閉院の意思を直接確かめた。閉院の噂が本当と分かると、診療所を継承したいとお願いしたという。

 西島氏は、清水に言われるまで、第三者継承という選択肢を全く考えていなかったようだ。しかし、誰かに経営を譲り、診療所を存続させれば、これまで診ていた患者をフォローアップできるなどのメリットがある。そのことから西島氏は、廃院ではなく、第三者継承を積極的に考えるようになった。

 清水が西島氏の事業を継承し、診療所名を西島脊椎クリニックから清水脊椎クリニックに変更した後も、西島氏は週に1度外来を担当し、自身が手術を担当した患者などのフォローアップを続けている。清水は、施設だけでなく、西島氏の人気と信頼を合わせて継承することに、成功したわけだ。

 休む暇なく働き続けたことが、西島氏の体調の悪化に影響したのではと考える清水は、開業と同時に前職を共にした医師を副院長として招き、自分1人に掛かる負担を減らすことも忘れなかった。

 「西島先生の先見性に時代が追いついてきた」と清水が言うように、現在、手術まで手掛ける脊椎クリニックは全国的に幾つか誕生してきた。

 先駆者の診療所を引き継ぎ、清水は今日も顕微鏡をのぞきながら、脊椎の低侵襲手術を実施している。 [文中敬称略]

清水の開業スタンス
●メスを捨てずに整形外科医として開業
●病院との役割分担を意識し、少ないマンパワーで可能で、手技が確立した治療に注力
●先輩医師が閉院しようとしていた診療所を継承