3次元データを基に、インクジェットプリンタの要領で薄い断面を重ね塗りしていくことで立体を作り出す「3Dプリンタ」。成型法はさまざまで、樹脂を熱で溶かして極細ノズルで射出してから自然冷却させるタイプや、光硬化性の樹脂を射出した後レーザー光で固めるタイプ、粉末に接着剤を吹きつけていくタイプなどがある。

 断面を重ねて成型するため、内部に細かい空洞を作ったり、微妙な曲面を出したデザインを作るのに向いている。これまでは企業や研究所での使用がメーンだったが、ここ数年で10万円を切る製品も出てきたため、個人での所有が増加。CADソフトでスマートフォンケースやフィギュアなどのオリジナル作品を作り、その設計図となる3Dデータをインターネット上で公開する人も出てきた。
 

写真1 欠損部の3Dモデル

 3Dプリンタの技術は医療分野にも応用されている。東京大学と医療材料の開発を手がけるベンチャー企業の(株)ネクスト21(文京区)が共同開発したのは、先天性の小顎症やがん切除、交通事故などの外傷によって、顔面の骨が欠けてしまった人に移植する、カスタムメイド人工骨だ。

 この人工骨の作り方は、まず患者の顔の骨をCTでスキャンし、欠損部の3Dモデルを構築(写真1)。そのデータを特殊な3Dプリンタに取り込み、リン酸カルシウムなどからなる骨の前駆体の粉末に硬化液を吹きつけて成型する(写真2)。 

写真2 骨の前駆体の粉末に硬化液を吹きつけて成型

 この人工骨が優れているのは、誤差1mm以内で欠損部にぴったりはまる上、支持性が高い点。既存の人工骨には、欠損部に合うように成型できるが支持性が弱く、術後に変形しやすい「ペーストタイプ」と、頑丈だが精密な成型ができず、異物と見なされて術後に皮膚から露出してしまうこともある「焼結タイプ」の2種類があるが、この両者の欠点を克服した。

 さらに人工骨の内部は、新たな血管や骨組織が形成されやすいよう、無数の穴を開けた形状にしている。これにより、自らの骨に早く置き換わりやすくなるという。原則的に、手術は患部の骨膜下に人工骨を挿入して糸で固定するのみと、簡便だ。

 顔面への骨の移植は、骨の形が合っていなかったり、外部からの力で変形すると、術後に患者の風貌が徐々に崩れてしまうという大きな問題があった。「この人工骨を使えば、元の風貌や表情を取り戻したまま維持できる。患者にとっては非常にメリットになる」とネクスト21代表取締役社長の鈴木茂樹氏は話す。

 日本では、東大など全国10施設で実施した臨床試験を既に終え、まもなく医療材料として承認申請をする予定。また海外では、オランダのマーストリヒト大学などで実際の患者の治療用として採用される見込みであるなど、臨床応用される日は近い。