同仁医薬化工代表取締役会長の数土武夫氏

 湿布を貼ろうとフィルムを剥がしたら、湿布同士がくっついてしまった。元に戻そうと引っ張ったら、別のところがくっついて、くしゃくしゃに・・・。あー、イライラする! ――湿布を貼ったことのある人なら、このイライラ、分かっていただけるだろう。

 「お客様から寄せられる声の中で、『くしゃくしゃになってしまって貼れなかった』『いったん貼ったものを剥がすと、もう使えない』といったクレームが多かった。これはメーカーとして何とかしなくてはいけないと考え、改良に取り組んだ」――医薬品メーカーの同仁医薬化工(東京都中野区)代表取締役会長の数土武夫氏はこう語る。

写真1 今年6月に第2類医薬品として発売されたボルタレンEXテープ(右)とジクロテクトPROテープ。ジクロフェナクナトリウムを成分とする鎮痛消炎剤で、シリーズにはテープ剤のほか、ゲル、ローション、スプレーがある。

 同仁医薬化工は、消炎鎮痛薬のジクロフェナク製剤の新剤形を日本で初めて開発した医薬品メーカーだ。医療用医薬品のボルタレンシリーズ(ノバルティス ファーマ)に加え、一般用医薬品(OTC薬)のボルタレンEXシリーズ(同)、ジクロテクトPROシリーズ(大正製薬)の製品を製造・供給している(写真1)。

 今年6月、両シリーズの新製品が発売され、テープ剤(いわゆる湿布)に、ユーザーのイライラを解消する、新たな改良が施された。くしゃくしゃになっても、引っ張ると接着面がきれいに剥がれ、元通りになるのだ(写真2)。従来品に比べ、皮膚にいったん貼っても剥がしやすく、肌に優しいのも特徴だ。ジクロテクトPROは、これを「貼り損じ防止機能」と命名している。

写真2 くしゃくしゃになっても(左)、引っ張ると接着面がきれいに剝がれ(中)、元通りになる(右)。

 消炎鎮痛テープ剤は、布(繊維)、有効成分を含んだ膏体、ライナーフィルムからなる(図1)。使い心地に最も影響するのは、皮膚に直接触れる膏体。実は従来品では、膏体が布に浸み込み、肌に触れる粘着面に凹凸ができてしまっていたという。つまり、凸の部分が点で接着する表面構造になっていたわけだ。点で接着した場合、引っ張ると接着部に強く力がかかり、皮膚の表皮細胞を剥がすだけでなく、膏体同士がくっついたときに表面の形状が崩れてしまっていたという。

図1 ジクロフェナクナトリウムのテープ剤の改良
膏体の凝集力を高めることで、布(繊維)に膏体が浸み込まず、粘着面に凹凸がなくなった。

 そこで同仁医薬化工は、粘着面の凹凸をなくすべく、布に浸み込まない膏体を作り出した。「例えばお餅は、もち米とうるち米の配合で、軟らかさ、伸び、弾力に違いが出る。膏体も一緒で、配合する成分のさじ加減で粘性、弾性が大きく変わる。また混合する際の温度、混ぜる速度、時間などによっても、全然違う性質になる」(数土氏)。そのため様々な条件を検討し、適度な粘着力を保ちつつ、最も膏体の凝集力が高まる条件を設定した。例えば温度は、ミキサーで撹拌しているときは135〜136℃を保ち、テープ状にするときには128℃から122℃に下げていくと最も凝集力が高まることが分かったという。

 こうして膏体の凝集力を高めた結果、粘着面を平面にすることができた。「点ではなく面になったことで、膏体同士がくっついたときにも均一に力がかかるため、剥がしやすく、表面の形状も崩れなくなった。皮膚にも優しくなり、安全性を高めることができた」と数土氏は話す。

 有効成分であるジクロフェナクナトリウムは、今年4月に第1類医薬品から第2類医薬品に移行したことで、消費者が手に取りやすくなっている。もし同製品を手にしたなら、くしゃくしゃになった湿布が元に戻る驚きを、ぜひ体感してみてほしい。