エリブリン (Eribulin、商品名ハラヴェン静注、右写真) は、エーザイによって開発された新規の抗がん剤。海綿動物クロイソカイメンから単離された天然有機化合物ハリコンドリンBの合成誘導体である。ハリコンドリンBは微小管の端にある少数の高親和性部位に主に結合して、強力な細胞分裂阻害作用を発揮し、がん細胞にアポトーシスを引き起こすことで抗がん作用を示す。

 2010年11月に米国で、2011年に欧州と日本で乳がんを対象に承認された。局所再発もしくは転移性乳癌に対し、エリブリンは全生存期間(OS)を改善することが、エリブリン投与と治験医師が選択した治療法(対照群)を比較したフェーズ3試験(EMBRACE)で明らかになっている。

 EMBRACE試験(Eisai Metastatic Breast Cancer Study Assessing Treatment of Physician's Choice Versus Eribulin E7389)は、エリブリン投与と治験医師選択治療を比較するグローバル無作為化オープンラベル試験。対象は、アントラサイクリン系抗癌剤やタキサン系抗癌剤を含む2〜5種類の化学療法による前治療歴のある局所再発もしくは転移性乳癌患者762 人。患者はエリブリン投与群と対照群に2対1の比率で割り付けられた。

 エリブリン投与群では、21日を1サイクルとして、第1日と第8日に、エリブリン1.4 mg/m2を2〜5分間かけて静脈内投与した。対照群は、単剤療法(化学療法、ホルモン療法、生物学的製剤)もしくは支持療法を受けた。

 その結果、主要評価項目であるOS中央値は、エリブリンによって2.7カ月延長することが報告されている(ハザード比は0.81、P=0.014)。

 また、一般に前治療と同じタイプの薬剤を再投与すると効果が下がるといわれているが、それら再投与患者を対照群から除外しても、エリブリンによるOSの改善効果は有意に認められることが確認されている。

 局所進行または転移を有する乳癌患者に対し、早い治療ラインでエリブリンと既存の抗がん剤カペシタビンを比較した第3相試験からは、エリブリンは主要評価項目であるOSと無増悪生存期間(PFS)で優越性を示すことができなかったが、トリプルネガティブ(HER2、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体が陰性)乳がんの患者ではOSを5カ月延長し、特定のサブグループでは大きな有用性を示す可能性も示されている。

 この他乳がん以外の様々な癌種での開発が進められている。