富岡中央医院(福島県富岡町、休診中)院長/双葉郡医師会長
井坂 晶氏

 私の富岡中央医院がある福島県富岡町は、福島第1原子力発電所の事故の影響で、現在も全域が警戒区域に設定されています。このため、福島県大玉村にある県内最大規模の仮設住宅に多くの町民が暮らしています。昨年10月、その仮設住宅内に診療所ができました。私は、郡山市内の病院に勤務しながら、週に1回、大玉村仮設診療所で診療に当たっています。

 富岡町は震災の翌日、避難指示を受けました。私自身もまず川内村に移り、その後郡山市に避難し、同市内の避難所で昨年8月まで診療を続けました。一方で昨年6月ごろから、仮設住宅の入居者の健康相談のため、大玉村を週1回訪問するようになりました。

 同村の仮設診療所では現在、私と2人の医師、1人の歯科医師らで診療しています。阪神・淡路大震災のときに、仮設住宅での孤独死のニュースを何度も見ました。「誰も孤独死させたくない」。その思いで診療を続けています。

 震災から1年がたちますが、富岡町の時間は3月11日の14時46分で止まったままです。一時帰宅したら、自宅から野放しにされていたブタが出てきたとか、町中をダチョウが走っていたという話を聞きました。今望むのは、富岡町に戻れるのかどうかを政府にはっきりさせてほしいということ。それから初めて、復興が始まるのだと思います。

 戻れることになっても、元々の町民が全員帰ってくることはおそらくないでしょう。しかしそのときの町民の数、年齢構成に合わせて必要な医療を提供できるようにするつもりです。それまでは大玉村での診療を通じて、富岡町民に寄り添っていきます。(談)