原町中央産婦人科医院(福島県南相馬市)理事長/南相馬市医師会長
高橋 亨平氏

 震災以降も南相馬市の自院で診療を続けています。お産の件数は震災前には月10〜15件ほどでしたが、今は月5件ほどです。市内5カ所の産婦人科のうち、再開したのは自院以外に1カ所だけ。放射能汚染に不安を抱き、若者を中心に市から去った人が多いため、出産件数自体が減っています。また、どこの医療機関も看護師などの確保に苦労しているようです。

 この1年を振り返って一番つらかったのは、昨年6月にお産が1件もなくなってしまったことでした。未来を支えるのは子どもです。このままでは、南相馬市は廃墟になってしまう。その思いから、除染研究会を立ち上げ、空間放射線量の調査や除染活動を始めました。

 昨年5月中旬から、妊婦や子ども約50人に被曝線量を測定するフィルムバッジを付けて生活してもらいました。その結果から、被曝線量の高い人の家を定期的に訪ねて空間放射線量を精査し、線量の低い場所を教えたり、線量の高い家の除染を行ったりしました。私も当初は放射線についてよく知らず、漠然と怖がっていましたが、今は怖さや不安を感じることはありません。また南相馬市では、市立総合病院にホールボディーカウンターを設置し、独自に内部被曝検診を行っています。現在までに、ほとんどの人は検出限界以下という結果が出ています。子どもの方がセシウムの排泄が早いことも分かりました。

 今の夢は、線量が限りなくゼロに近い、妊婦や子どもが安心して暮らせる家を作ることです。実現は十分可能。希望のシンボルとなる家を作り、少しでも多くの人が南相馬市で安心して暮らせるようになることを望みます。(談)