岩手県立山田病院(岩手県山田町)内科長
荒金 和美氏

 昨年7月に県立山田病院に赴任してから、約8カ月が経過しました。震災が発生した時、大阪市内で開業準備を進めていましたが、あまりに凄惨な状況を目にして、「被災地で働きたい。そうしなければきっと後悔する」と感じました。そして、できれば病院勤務医として腰を据えて臨みたいと思いました。

 思い立ってすぐ、以前から医師不足が深刻だった岩手県に連絡。被災した山田病院の常勤医は、整形外科医の院長と外科の副院長の2人だけで内科医が不在と知り、同病院での勤務を決めました。体力や医師としての経験を考えると、年が今より10歳上でも下でもこの決意はしなかったでしょう。

 山田町とは縁もゆかりもなく、赴任に際して不安がなかったわけではありません。ですが、山田町の皆さんにとても優しく迎え入れていただき、今ではすっかり溶け込んでいます。

 患者さんは被災された方がほとんどで、親族を亡くされた方もいます。私は当初、そうした患者さんの苦悩には触れてはいけない、察しなければならないと思っていました。けれど、震災を経験していない私がその苦悩を本当に理解できるわけがありません。ならばせめて、「精一杯お話を聞かせていただこう。それが私にできることだ」と思うようになりました。すると患者さんも自然と思いを吐き出し、安堵して診察を受けてくれるようになりました。

 山田病院は、仮設施設での診療が続き、今後どうなるのか未定ですが、同病院を患者さんや職員の交流の場にしたいと考えています。その第一歩として、来年度から健康講座を定期的に開催したいと思っています。(談)