石巻赤十字病院(宮城県石巻市)医療社会事業部長
石井 正氏

 石巻赤十字病院(一般402床)の外来患者数は、震災前と大きく変わらないレベルにまで戻りました。ただ、津波被害を受けた石巻市立病院(一般206床)が休止しているため、病床は常にほぼ満床の状態です。地域で不足している病床を補うため、今年3月に当病院に50床の仮設病棟が開設されます。現在は、石巻市立病院から臨時で看護師の派遣を受けたり、同病院を退職した医師や看護師などに来てもらったりしています。

 東日本大震災で津波の被害を免れた当病院は、災害医療の最前線の拠点として機能しました。私は宮城県の災害医療コーディネーターの一人に任命されていたこともあり、当病院の災害対策本部で全国から派遣されてきた医療支援チームをまとめる役回りでした。今回の震災で、こうした経験をした人間は限られています。ですから今は、自身の知見を、今後の災害医療に役立てるのが務めではないかと考えています。

 具体的には震災1年を機に、「災害医療ACT研究所」(代表は山形県立中央病院救命救急センター診療部長の森野一真氏、事務局は石巻赤十字病院)を立ち上げ、災害医療の課題を解決するための研究や取り組みを進める予定です。

 私がそうであったように、今回の震災では多くの被災地で地元の医師が医療支援を統括する役を担いました。現地の行政や関係機関との人脈、土地勘を持つ地元の人間がまとめ役になるのは理にかなっています。ただ同時に、被災地の拠点には、事務など後方支援を担う人材や、リーダーを補助する“ブレーン(頭脳)”を集めることが重要だとも気づかされました。

 震災直後は300カ所以上の避難所への医療提供だけでなく、衛生環境やライフラインの復旧状況のアセスメントなども取りまとめる必要に迫られました。当然、医療支援チームの登録、アセスメントしたデータの入力や管理、会議の議事録作成など膨大な事務作業を毎日こなさなければなりません。こうした作業を担ってくれたのが、日本赤十字社から次々送られてきた後方支援の人材でした。災害対策本部には常時、10〜20人が支援に来てくれていたと思います。

 また、災害医療のノウハウを持った専門家が週替わりで災害対策本部に参加していました。刻々と変化する状況において、様々な相談に乗ってもらえる専門家の存在は心強いものでした。災害医療ACT研究所では、災害対策本部で後方支援を担う人材や、ブレーンになれる災害医療の専門家を育成し、災害時に送り出して現地のまとめ役を補助できればと考えています。

石巻赤十字病院は駐車場に50床の仮設病棟を建設。3月にも入院患者の受け入れを始める。

 今回の震災では医療支援活動を行う前提として、食料や通信環境、移動手段を確保することの重要性も痛感しました。石巻赤十字病院では2011年12月、近隣の大型ショッピングモール、イオン石巻店と災害協定を締結。私たちが災害時の医療提供を約束するとともに、イオン石巻店側には駐車場の提供や、ガソリンなどの物資の優先販売などをしてもらえるようにしました。災害医療ACT研究所でも今後、災害時に助け合えるよう、様々な業種の企業と協力したいと考えています。

 私自身はようやく外来診療に復帰しました。ただ、依然として災害医療に関係する業務が多く、周術期の管理などを要する手術にはまだ入れていません。外科医としての本格復帰はしばらく先のことになりそうです。(談)