岩手県内では被災した全ての病院が仮設などで診療を再開。診療所も約8割が診療をスタートした。ただ、津波で全壊し、仮設で診療を再開した高田病院(一般136床、稼働病床は70床)、大槌病院(一般121床)、山田病院(一般60床)の3つの県立病院の移転、新築後の姿は全く決まっていない。いずれも震災による人口減で入院機能がどの程度必要か測り切れておらず、慎重な検討が進められている。

 現時点で唯一、病床を復活させたのは高田病院だ。今年2月に仮設の病院に一般病床41床を設け、入院を再開した。しかし、現状の病床数は震災前より大幅に少なく、今後、何床が追加で復活するかは分からない。大槌病院と山田病院に至っては、仮設の診療所で外来を始めたものの、町全体が壊滅的な被害を受けて人口が激減したほか、病院があるそれぞれの医療圏には他にも県立病院があり、入院機能の再開が必要なのかも見えない状態だ。

岩手県立高田病院の石木幹人氏は「リハビリなどを充実させ、再び高齢者のための病院を作りたい」と話す。

 これに追い打ちをかけているのが医師不足。高田病院では震災後、2人が赴任して常勤の医師は計8人と手厚くなったが、大槌病院と山田病院の医師はそれぞれ3人だけ。12年2月には、医師の配置基準の緩和を盛り込んだ県の「保健・医療・福祉特区」が東日本大震災復興特別区域法に基づき認定されたが、病院には最低でも医師を3人配置することが求められる。その上、当直などが必要になる入院機能を復活させるには医師の増員が不可欠で、行政担当者は頭を悩ませている。

 ただ、現場の医師からは、入院機能の拡充や再開を望む声が多い。高田病院長の石木幹人氏は「癌の終末期や誤嚥性肺炎の高齢者など、入院のニーズは高い。在宅医療の後方病床としても必要だ」と話す。

「急性増悪した在宅患者の受け皿として大槌病院の入院機能は必要」と語る釜石医師会の小泉嘉明氏。

 震災後、家族の介護力が低下し、在宅医療で診られない患者が増えている釜石市でも同様だ。釜石医師会長の小泉嘉明氏は、「急性増悪した在宅患者の受け皿として、大槌病院の入院機能が必要になる」と話す。現在、40床程度を再開する方向で行政などと話し合っているという。

 一方、県保健福祉部は「数年後には3つの病院とも移転、新築が必要になると考えられ、それを前提に病床の数や種別をどうするのか、関係者と話し合って決めていかなければならない」としている。県は難しい舵取りを迫られそうだ。

図3 震災と原発事故で影響を受けている主な病院と再開状況(病床数は震災前と現在のもの)
(*クリックすると拡大表示されます)