新病院にどんな機能を持たせ、病床を何床設けるべきか─。被災地では公立病院を中心に再建へ向けた検討が進む。だが、人口減で地域の将来像が描けず医師の確保も難しい。課題は山積している。


 被災地では、仮設の診療所や病院で診療が再開(図3)。復旧が本格化してきた。現在は、主に被災した病院について再建後の機能や病床数の検討が進められている。ただし、人口減少に加え、産業復興のめども立たない中、病院の機能を検討するのは容易ではない。さらに、これまで以上に深刻な医師不足という難題も降りかかる。

図3 震災と原発事故で影響を受けている主な病院と再開状況(病床数は震災前と現在のもの)
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機能分担でプライマリ充実
 2012年1月時点で、宮城県内でいまだに診療を再開できていない病院は石巻市立病院(一般206床)、恵愛病院(石巻市、精神120床)、南浜中央病院(岩沼市、精神200床、療養42床)の3つ。廃止または休止中の診療所は50カ所に上る。ただし現状では、近隣の医療機関に患者が押し寄せるといった事態は起きていない。公立志津川病院(一般76床、療養50床)など沿岸部の公立病院は津波で大きな被害を受けたものの、仮設などで診療を再開。数年後には、診療所や病院が新築される予定だ。

 ただ、「県内の医療資源が豊富なわけではないので、中長期的な復興には機能分担を考える必要がある」と県保健福祉部長の岡部敦氏は説明する。県がまとめた地域医療復興の計画によると、沿岸部の一部の被災地ではプライマリケアの充実や、在宅医療や介護サービスの拡充を図り、従来のレベルまでは病床数を復活させない方針だ。

 例えば、津波で廃止となった石巻市立雄勝病院(療養40床)の代わりとして、今後建設される新しい診療所は無床化が検討されている。従来の建物で外来のみ再開した気仙沼市立本吉病院(一般38床)も、今後2次救急などの機能強化を図る気仙沼市立病院(一般451床)との機能分担を考えながら、病床の再開を検討する予定で、病床数は削減の方向だ。

 石巻市立病院に至っては、病院機能が大きく変更される見通し。同病院は従来、2次救急や多くの消化器外科手術をこなす拠点病院だった。しかし津波で全壊し、診療を休止。医師も次々離職し、現在は市の病院局長を兼務する院長を残すのみとなっている。石巻市には3次救急までを担う石巻赤十字病院(一般402床、12年3月から仮設病棟に50床を開設)があり、同病院は、今後さらに救急機能などを強化する計画だ。

 石巻市立病院は15年までに移転、新築される予定だが、新しい病院に再び多くの診療科や専門医をそろえるのは難しい。岡部氏は、「自治体と議論しながら、総合医がプライマリケアを担う1.5次の病院を目指す方向だ」と話す。

 課題は総合医など医師の確保。東北大は、医師を短期間ずつ循環させて配置したり、ゲノムコホート研究などを行う「東北メディカル・メガバンク構想」を通じて医師を集める考えだが、奏功するかは不透明だ。