同法人の救護班の中には、仮設診療所を設置できるユニットを装備したチームも5チームあったほか、各救護班に衛星電話や無線を装備させ、相互に連絡できる体制を確保。地震で通信が遮断された状況でも、本部や現地支部からの指示を受けながら被災者の救援に取り組んだ。3月28日時点で延べ397チームが被災地に入り、今後も派遣を続けていく予定だ。

 日赤と同様に、災害派遣医療チームDMAT)も早期から対応した。DMATは、阪神・淡路大震災の経験を踏まえて、厚生労働省主導で全国に整備されている。各地の災害拠点病院や中核病院から、医師や看護師などで構成されるチームが多数出動(図2左)。3月25日時点で延べ600チーム(約2400人)ほどのDMATが現地入りし、災害拠点病院での急性期医療や、避難所での巡回診療など、幅広い救護活動を担った。

図2 災害派遣医療チーム(DMAT)の活動状況(左)と保健師を中心とした派遣チームの活動状況(右)
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 ただ、日赤やDMATなどの素早い対応にもかかわらず、初期における現地での活動は困難を極めた。DMATとして地震発生当日に現地入りした、八戸市民病院救命救急センター所長の今明秀氏によると、「交通が寸断されていたほか天候も悪く、チームがなかなか被災地に入れなかった。自衛隊のヘリコプターでチームの医師が被災地入りしたのは翌朝だった」という。携行した医薬品などの物資もすぐ底を突き、診療は大きく制限された。

 超急性期を担うDMATなどの役割が一段落した地震発生5日目の3月15日には、日本医師会が各都道府県の医師会の協力を得て、日本医師会災害医療チームJMAT)を派遣。現地では慢性疾患や感染症など日常診療に準じる活動が中心となりつつあり、その支援に名乗りを挙げた。常時100チーム(約400人)が活動する状態を保つとしている。

 コメディカルの活動も活発化している。被災地の要請を受けて厚労省が派遣した保健師などのチームは日を追うごとに増加。3月23日時点で89チーム(317人)が被災者のケアに当たっている(図2右)。

 透析患者や重症の入院患者など、現地の避難所や災害拠点病院で対応しきれない患者も多数発生した。こうした患者に対応すべく、動き始めた医療機関もある。全国に66カ所の病院を持つ医療法人徳洲会もその一つ。同会は徳洲会医療救援隊TMAT)を派遣して現地で診療を行っているほか、被災地の透析患者など100人近くを、千葉徳洲会病院(千葉県船橋市)などグループ内の複数の病院で受け入れた。

 同会の災害対策本部は、「被災地では十分な医療を受けることが困難な状況。当会では全国で計4000人の患者の受け入れが可能であり、できる限り協力したい」としている。

特例認める通知を多数発出
 こうした現場の動きに呼応するように、厚労省はこれまで多数の通知を出した(表2)。多くが被災者への医療提供に関わるものだ。

表2 東日本大震災に関して厚労省が出した主な通知
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 被災地だけでなく全国の医療機関に関連する通知としては、被保険者証のない被災者の受診に関する取り扱いがある。被災者が氏名、生年月日、保険者の事業所名(国保などは住所)を申し出れば、保険証がなくても診療するよう通知。また、住宅が全半壊したり、主たる生計者が死亡・行方不明になった被災者については、医療機関は医療費の自己負担分を請求せず、審査支払機関に10割請求する形の措置が取られた。

 もっとも、被災者の本人確認ができないまま診療した場合などは、医療費が支払われないのではないかといった心配もある。これについて厚労省保険局は、「医療機関の持ち出しにならないような措置を考えていく」としている。

 このほか、全国的な医薬品の供給不足に備え、長期処方の自粛を医療機関に要請するとともに、医薬品や医療機器を医療機関同士で融通しても薬事法違反とならない旨を通知。被災地への派遣などのため一時的に職員数が減り、施設基準などが満たせなくなった場合でも変更の届け出や診療報酬の減額などが当面免除されるといった旨も通知した。

 また、日本の医師免許を持たない外国人医師が被災者を診療しても違法ではないとする事務連絡も岩手、宮城、福島の3県に出された。